【読み方に注意が必要な記事の検証】 ~感染者が次々に誤断を積み上げて行くケーススタディ~ ~ステルスマーケティングの可能性も感じる記事~
4月23・24日と連続で、「論座RONZA」という朝日新聞系のウェブサイトに、次のような記事が連続掲載されました。記事の筆者は政権に批判的な姿勢の朝日系ベテラン・ジャーナリストです。一連の体験を「武勇伝」のように記述しています。一見、事実を冷静に陳述しているように読める記事なのですが、実は偏見と無知に基づいた政権・体制批判の記事になっております。違う何かに憑かれているように感じます。
また、ステルスマーケティングが疑われる記事です。なぜなら前編後編で合計すると「ナビタスクリニック」が6回、「久住(医師)氏」が7回も連呼されており、文章全体も「保健所や他の病院を下げナビタスを上げる」構成になっているからです。
◆結論
結果として感染者だった記者が、(偏見と無知識に基づくと推測される)誤断を次々と繰り返し、周囲に感染リスクを振りまく危険行為を続ける姿には驚かされました。ジャーナリストを名乗るのであればよく勉強し、「何が危険行為か」「何を周知すべきか」を認識して論考を世に送って頂きたいと考えます。
私自身も無知に悩む無学者ですが、これは21世紀の国民教育の課題だと考えます。
以下具体的に、この記事のどのような点に注意すべきかを列挙します。完全に私見ですので、異論も多いと想像致します。また、ジャーナリスト個人や登場する固有名詞の医師の方々を非難する意図はありません。なお、冗長で気分を害する可能性もある文章になっていることはお許しください。
(もちろん、私の読み方だけが正解である訳もなく、「私にとっての“真実”」に縛られた視点からですのでその点は差し引いてください。)
◆当該記事(前編・後編)
《前編》
“ 私はこうしてコロナの抗体を獲得した《前編》保健所は私に言った。「いくら言っても無駄ですよ」 恐らくはジャーナリストとして初めてであろう「私のコロナ体験記」 ”
“ 佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長 ”
《後編》
“ 私はこうしてコロナの抗体を獲得した《後編》PCR検査の意外な結果、そして… ”
◆リスクを拡散する行動
以下、記事に関して「リスクを拡大する」可能性がある内容を列挙して検証します。「“”」内は記事より抜粋し、「⇒」以降に私が感じた論点(23個)を記述してまいります。
1. “まずは事実だけを淡々と書き記しておこう。”
⇒こう書きながら意見に溢れる記事である。
2. “いくら言っても無駄ですよ”
⇒表題に保健所や現体制への悪意が感じられる。
3. “ 2日連続の徹夜となったが、”
⇒徹夜生活で体力が低下すれば免疫力も低下しかねない。仕事のやり方もリスクを減らす方向に変えるべきではないか。
4. “初めてナビタスクリニックの受付に足を運んだ”
⇒発症4日目に相談センターへの電話ではなく外出訪問・受診している。
5. “目的は初めての抗体検査だった。”
⇒発症4日目では早すぎて抗体検査で感染しているかどうか判定不能である。
6. “今PCR検査はなかなか受けられない。なぜ受けられないのか。その大きい原因となっている構造については、『安倍首相が語った「コロナのピークを遅らせる」と「五輪開催」の政策矛盾』(3月17日公開)に記した通りだ。”
⇒PCR検査を受けられないのは「安倍政権の政策矛盾」という印象操作ではないか。
7. “ナビタスクリニックはこの時、医療関係者ら同クリニックが必要と認めた人にのみ抗体検査を実施していた。私の場合は紹介があったことと、COVID19の取材を続けているジャーナリストであることから必要性があると判断された。”
⇒この一文から、「医学的な診断から必要と認めたのではなくて、ナビタス側の“マーケティング”の観点から利害が一致したのではないか」と感じてしまう。つまりこの記事に「ステマ」の可能性を個人的には感じている。
8. “4月23日から、一般の方からの抗体検査申し込みを受け付けている。ただし、保険適用がないため、一回5500円は自費となる。”
⇒親切で丁寧なセールス文である。
9. “私はすっかり安堵して帰宅し、久々に冷たい缶ビールなどを飲んで過ごした”
⇒ここが問題の部分。
問題1:COVID-19を疑い、早すぎるタイミングで適切ではない方法で外出・受診していること。
問題2:「適時適切」ではない方法で検査していること。
問題3:当然の帰結として陰性(実際は偽陰性)の判定を受けて「安堵」し飲酒
10. “3日になって、単なる風邪から私の持病のひとつである痛風までお世話になっている近くの「かかりつけ医」を訪ね”
⇒「自分はコロナ感染者ではない」という誤認から外出しクリニックに足を運んでいる。クリニックの医師等医療従事者や他来訪患者への感染リスクを高める危険行為を行っていることへの自覚が全くない様子が恐ろしいと感じる。
11. “部屋の前で珍しく家人が電話口で言い争っている声が聞こえてきた。「じゃあ、どうしたら検査は受けられるんですか」何度も電話していた保健所の担当者とつながったらしい。”
⇒不安と焦りは分かるが、このように食い下がって電話を長引かせることで必要な相談者が相談できる機会を減らしてしまう要素はあるだろう。
12. “私は取材を通して、なかなかPCR検査を受けられない構造を知っていたので、早々に電話を切り、「かかりつけ医」に連絡した。このように検査を断られた場合、「かかりつけ医」の方から改めて保健所の方に連絡してくれるという説明を聞いていたからだ。”
⇒こういう“裏技”を開示することで、医療現場に圧をかけるリスクには思い至らないのだろうか。
13. “後で聞いた話では、この医師はかなり強く検査の必要を訴えてくれた。結果的にPCR検査が認められたわけだが、やはりこの「かかりつけ医」のようにかなりベテランで、住民からも保健所からも厚く信頼されている医師が強く訴えた場合、保健所としても最終的に検査を認めざるをえないのだろうと私は推測した。”
⇒これも「検査を受けさせろ」と強引に要求する人々を増やしかねない危険な告知だ。
14. “大きい疑問符を背負わされたまま再び医学界の外に放り出された。(略)私は再びナビタスクリニックに電話をかけた。”
⇒ナビタスクリニックは「医学界」の外側の機関らしい。(この後また外出訪問している。)
15. “症状が落ち着いてきた今、再度のPCR検査など受けられるわけがない。ウイルスの正体を正確に摑むためには、より精度の高い抗体検査を再び受けるしかない。”
⇒“適時適切”ということに思いを致すべきではないか。
16. “ナビタスクリニック理事長で内科医の久住英二氏は私を診察室に呼び入れた。久住氏はキットを眺めながら若干言葉を選んでいる風も見えたが、はっきりこう言った。「結果が出ました。おめでとうございます。コロナウイルスを乗り越えられました」結果は陽性だった。”
⇒「乗り越えられた」は比喩表現だろうか。「抗体がある」ことは「再感染を完全に遮断」することとは、現段階では未だ確定していないのではないか。この点は今後の科学的な結論を待つべき段階だろう。つまり、間違いとも言えないが今言い切るのは時期尚早である。
17. “問題は4月8日のPCR検査の結果だが、私の推測では、早めに頭をのけぞらせてしまったためにコロナウイルスそのものをぬぐい切れなかったのだと思う。”
⇒個人の推測は完全に自由である。そこに異論はない。しかしこの場合、PCR検査の偽陰性の確率が30%程度はあると言われることなどもジャーナリストであれば記載・告知すべきであろう。
18. “適正な日にちを置けばかなり正確な抗体の存在が確認できる。つまり、COVID19に対して免疫を獲得できた人間を正確に捕捉することができるということだ。”
⇒「抗体の存在=免疫獲得」は未だ確定した事実ではないのではないか。(否定はしていない。違う可能性も未だある。ゆえに「つまり」で等価変形して演繹することは未だ許されないだろう。今後の科学的な事実が確認された後ならば「真」となる。)
(※「COVID19」ではなく「COVID‐19」が正確な表記。ハイフン(‐)が抜けている。)
19. “免疫獲得が確認された人には「免疫獲得証明書」などを発行して外出制限を緩和、早期に社会復帰させて医療現場や経済活動の再開に尽力してもらおうという考えが広がっている。欧米では、免疫獲得者のことを「コロナ・ブロッカー」などと呼び、久住氏も「ニュータイプ」と呼んでいる。”
⇒「抗体の存在=免疫獲得」は未だ確定した事実ではないのではないか。
20. “「抗体検査はPCR検査と組み合わせて、社会を支えるためにも広く実施していかなければいけません」(略)COVID19対策についてすべての面にわたって動きの遅い安倍政権は、抗体検査についても、当初から積極的な姿勢を見せていなかった。しかし、ここ数日、厚生労働省は数千人を無作為に抽出して4月中にも抗体検査を実施すると報道され始めている。抗体検査に前向きな姿勢を見せ始めたことは率直に評価したいが、PCR検査に消極的だったこれまでの姿勢、患者が急増した場合にも耐えうるような医療体制再構築に手を着けてこなかった安倍政権にはCOVID19対策への希望の光がまったく見えない。”
⇒PCR検査の偽陰性と偽陽性について十分に周知されていない現在、医療資源の温存に努めることが死者を減らすことにつながる。これが直面する課題である現在、このように「PCR検査を増やせ」という現実的制約に配慮しない論調は危険行為である。(もちろん受入れ体制のキャパシティが十分ならば、検査を増やすという一般論には同意する。)
21. “日本感染症学会の舘田一博理事長(東邦大学教授)自ら「軽症患者にはPCR検査を推奨しない」と公言している。医療体制を再構築してPCR検査を拡大、COVID19に打ち勝ちつつある韓国とは真逆の考え方だ。どちらがCOVID19対策として成功し、どちらが失敗したかは現実を見れば明らかだろう。韓国の街には人が戻り、日本では先行きを見通すことが極めて難しい。”
⇒何を成功と見なし、何を失敗と感じるか次第だが、百万人当たりの死者で比較しても桁違いに死亡者を少なく抑えている日本を失敗と断定し、イデオロギーからなのか読者をミスリードすることは今はやめて頂きたい。
22. “日本の民間のクリニックで抗体検査を実施しているところは、私が受けたナビタスクリニックだけだろう。当初は一般には実施していなかったが、4月23日から、一般の方からの申し込みを受け付けている。私の場合は、紹介があったことと、医療関係者同様、COVID19の取材を続けているジャーナリストで検査の必要性があると久住氏が判断したことによる。”
⇒丁寧な商品告知文でしょう。
23. “抗体検査とPCR検査を両方ともに受けた人間として、私は、両検査とももっと一般的にならなければならないと考える。”
⇒個人的体験の主張は自由である。しかし繰り返しだが、体制の逼迫が喫緊の課題である現在の日本で、その現実状況を考慮に入れずにPCR検査の増加を主張するのは、危険行為だと考える。
以上
【文責:田村和広】
[コメント(原英史)]
佐藤氏の記事は、PCR検査が絶対ではないこと、感染初期のIgM抗体検査の有用性には疑問があることを体験をもって示した点で、私は一定の価値あるものと思いました。感染期の外出が繰り返されたことに疑義はありますが、自家用車での移動、電話予約など一定の配慮はなされていたように考えられます。感染の疑いの生じた人が、検査を強く求め、医療機関への突撃に至ってしまうのは、気持ちはよくわかります。これが保健所・医療機関の機能低下をもたらさないため、相談・隔離体制のさらなる改善・強化が重要と改めて思いました。
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