情報検証研究所のブログ

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【COVID-19検査陰性は「今感染していない」ことを保証しない】  ~「検査陰性=未感染の証明」という短絡(誤解)~

 これはそんなに理解不能なことなのでしょうか。COVID-19のPCR検査や抗体検査で陰性が確認されると「私はコロナウイルスに感染していない、少なくとも今、感染していない」と認識してしまう方がかなり多いようです。
 
 
◆ 「抗体検査陰性」だったので舞台出演を決断
 
 7月に入り新宿の舞台でクラスターが発生しました。舞台の主催企業は7月7日時点で出演者の感染を確認しその事実を発表しました。本件はその後、多くの報道がなされましたので、目にした方も多いのではないかと思います。
 主催企業のウェブサイトの開示情報(※1)によれば、7月4日、症状を申告したある出演者について、「抗体検査の結果が陰性であったこと」等を理由として出演させる判断をしたとのことです。
 
◆ 一般市民の誤解は仕方がないが政治家は
 
 「COVID-19関連の検査」について、専門家ではない一般的な国民の認識が未だこの水準なのは理解出来るのですが、影響力のある一部政治家さえも理解が浅い(≒誤解)ようで大変残念な状況です。
例えば、NHKの報道によると大阪市の松井市長は7月14日「Go Toキャンペーン」に関して、
「感染拡大をさせない仕組みを講じたうえで実施すべきだ。キャンペーンに参加する客や事業者に抗体検査を受けてもらえれば、感染は広がらない。府とも協議して大阪で仕組みを考えていきたい(松井市長)」
と述べ、利用者に対して事前に抗体検査を行う仕組みを検討する考えを示したそうです。(※2)
 本来、行政の長や有力な政治家とは、正確な情報を配信する側です。そのような役割の彼らが誤解に基づく情報発信を行い、それで世論が形成されて行くことは回避したい現象です。本人たちに正確な情報収集に努めて頂きたいことはもちろんですが、厚生労働省や政府などの情報発信にも、対象先や手法と効果について、まだ改善余地があると感じます。
 
 
◆ 検査で得られる安心は“まぼろし” 
 
 PCR検査で陰性になっても、抗体検査で陰性になっても、そのことが「今感染していない」という保証には全くなりません。検査精度(感度・特異度)を考慮すれば、「検査の結果、陰性だった」という事実で手にするのは“偽の安心”に過ぎません。それを心の支えに接触機会を増やせば、むしろ感染を広げることになりかねず、「検査」が感染拡大リスクを一層高める可能性さえあります。最初にあげた舞台クラスターの事例は、その典型例ではないでしょうか。
(もちろん舞台クラスターの件は発生確率が不明なので「偶々発生したレアケース」に対して私が殊更に注目している可能性もありますので、どうか今後の推移にもご注目ください。)
 
 
◆ 国内外の感染状況の推移には注意
 
 現時点では、高齢者層には感染が広がっていないようなので落ち着いて対処すべき段階です。しかし、家族や人的なつながりを通じて、高齢者施設や医療施設でクラスターが発生することは回避したいものです。そのため私達も感染を広げない努力を継続し、過度に恐れたり侮ったりせず、国内国外を問わず感染状況の推移には注意して行くことが肝要ではないでしょうか。
 
(おわり)
  
 
 
(以下参考サイト)
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※1 主催企業の開示情報
“【2020年07月12日】
当社主催の舞台における新型コロナウイルスの感染につきまして
2020年7月12日
株式会社ライズコミュニケーション
当社主催の舞台における新型コロナウイルスの感染につきまして
1 感染者の状況につきまして
現時点で、2020年6月30日から2020年7月5日に公演されました舞台『THE★JINRO-イケメン人狼アイドルは誰だ!!-』に関し、出演者16名、スタッフ5名、ご観覧者様9名の、合計30名の方々に、新型コロナウイルスの陽性反応が確認されております。感染経路に関しては、保健所と情報を共有し、引き続き調査を行っております。
また、現在、2020年6月30日から2020年7月5日の全ての公演において陽性者が確認されております。
(略)
3 一部報道につきまして
一部報道では「体調不良の出演者がいながら上演を強行した疑い」とございます。当社としては、公益社団法人全国公立文化施設協会等の定めるガイドラインに即し、出演者に対し、稽古及び舞台中に37.5度以上の熱が出たり、体調不良を覚えたりした場合には、直ちに制作スタッフに申告していただくようお願いしておりました。7月4日に1名の方から申告をいただきましたが、抗体検査の実施の結果、陰性であったことと、検温の結果がガイドラインの規定の範囲内であったことから、ご本人とご相談の上、ご出演となりました。 (株式会社ライズコミュニケーション http://risecom.jp/news/

 より引用)”
※2 NHK報道より
“ 「Go Toキャンペーン」利用者に抗体検査を 大阪市 松井市長
2020年7月14日 19時09分
政府の消費喚起策「Go Toキャンペーン」が今月22日から始まることについて(略)大阪市の松井市長は14日、記者団に対し「感染拡大をさせない仕組みを講じたうえで実施すべきだ。キャンペーンに参加する客や事業者に抗体検査を受けてもらえれば、感染は広がらない。府とも協議して大阪で仕組みを考えていきたい」と述べ、キャンペーンを利用する人などを対象に、事前に抗体検査を行う仕組みを検討する考えを示しました。
NHKサイトより引用

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200714/k10012515801000.html) ”

 

 

【文責:田村和広】

 

 


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