情報検証研究所のブログ

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【提言:コロナに立ち向かうためにインフル予防接種を】   ~コロナと見分けにくいインフルを予防しよう~

 COVID-19感染抑制策として、日本では「三密(:密閉・密集・密接)の回避」が推奨され、大きな効果があったと推定されます。できる範囲で最善を尽くすことが大切だと、改めて実感致しました。実は次の波に向けて、今年後半にはもう一つ自助努力でできる感染症対策があります。それは「インフルエンザ予防接種」です。
 

◆ コロナ対策でなぜインフル?

 一見するとこの対応策は捻じれているように思えます。「インフルエンザワクチン」では「コロナウイルス」感染を予防できないからです。ではなぜ「次のCOVID-19・アウトブレイクへの準備としてインフルエンザ予防接種」なのでしょうか?それは、次のような(演繹的)推定から導き出される解なのです。
事実(※):「今回のCOVID-19で、クラスターを大きくしたのは初動の遅れ」
事実(※):「発熱などの症状を「インフルエンザ」や他の疾患と区別できなかったのが初動の遅れの原因の一つ」(ご注意:全てではない)
ゆえに、
推定:「インフルエンザの重症化や流行を回避して、(コロナ)PCR検査件数自体を減らすことは、COVID-19のアウトブレイクを防ぐことに有効だ」
と考えます。
※ これらを事実と判断した根拠の一つは永寿総合病院の会見です。『7/1日本記者クラブでの院長会見について』資料①を参照し、関連部分を引用します。
===(引用ここから)===
“1)当院で新型コロナウイルス感染症が発生した状況
当院における新型コロナウイルス感染症の拡大は、3 月 20 日前後の発熱者の発生から明 らかになりました。一つの病棟で、複数の患者様と看護師が発熱し、新型コロナウイルスや インフルエンザの集団感染が疑われました。 保健所に相談し、3 月 21 日に発熱のある 2 名の患者様に新型コロナウイルス感染症診断 のための PCR 検査を施行し、(略)25 日には 9 名の患者様の陽性が確認され、26 日から全病棟の全ての患者様、27 日から全職員の PCR 検査を開始し、全ての検査結果が得られるまでに 9 日以上を要しました。(略)また、急性期病院では、発熱や肺炎を起こす他の病気を持つ患者さんは珍しくなく、その中から、上に述べたような特徴を持つ新型コロナウイルス感染症の患者さんを判別するためには、PCR 検査が必須となります。”
===(引用ここまで)===
(前掲資料①より抜粋。正確には下記にURLを添付した原資料をご確認ください。)

http://www.eijuhp.com/user/media/eiju_kenshin/layout/20200701siryou1.pdf

 

 
もう一つの根拠は、次のようなある施設のクラスター報告です。
===(引用ここから)===
“保健福祉事務所に現状を報告(発熱者5名時点)
以下の指示あり
  1. 有症状者の増加または、どなたかが重症化もしくは発熱の原因がわかり次第報告をして下さい。
  2. アルコール計の消毒液かハイター系で施設手すり等を午前、午後で消毒をして下さい。
  3. インフルエンザの可能性もあり。→医師の指示に従うように。
主治医へ連絡・訪問診療・受診(採血、レントゲン、インフルエンザ検査等)
保健福祉事務所に現状の報告→様子観察の指示 ”
===(引用ここまで)===
(ある施設の報告より抜粋。正確には下記にURLを添付した原資料をご確認ください。)
 
◆ 現在のインフルエンザ予防接種実施率は約50%
 コロナウイルスでは日本(世界)中から切望されているワクチンですが、実はインフルエンザワクチンの接種率は約50%に過ぎません。打てる人の2人に1人しか接種していない状況です。「打っても感染自体は防げないのではないか」と言われていますが「罹患しても重症化しにくい」という効果はあるとも言われております。寧ろ「重症化を防ぐ」ことを目的としているのではないでしょうか。
厚生労働省ウェブサイト「平成27年度予防接種実施率について」より一部引用
インフルエンザ対象人口33,901,300人、実施人員17,239,503人、実施率50.9%
※ 対象人口:当該年度に新たに標準的接種期間に達した人口  実施人員:当該年度に定期予防接種を実施した人数
インフルエンザ予防接種実施率の推移(平成18年から平成27)
H18年48.3→ 52.8→ 55.9→ 49.5→ 53.0→ 51.7→ 49.6→ 49.7→ 50.6→ H27年50.9%)
(前掲「平成27年度予防接種実施率について」:
 
  
◆ そもそもインフルエンザを見くびっている?
 インフルエンザ予防接種は簡単に出来る予防策ですが、現在の日本では2人に1人は打っていないという状況です。これは、“2人に1人は、「自分はかからない」または「かかってもたいしたことはない」と思っている”という現実を象徴しています。コストは「約3,000円+接種に行く時間と手間」であり、利得の期待値がそれより小さいという判断を直感的に下しているという証拠です。しかしこれは自己に都合よく過小評価しております。インフルエンザの超過死亡は大きく変動しますが日本では毎年1万人前後で推移しております。
(個人的には受験生に関わる仕事をしているので、毎年必ず予防接種を受けており、感染予防に努めております。)
“ Don’t underestimate the flu.(インフルエンザを甘くみるな)”
と警告してくれるのではないでしょうか? 
 
コロナウイルスとインフルエンザの同時流行は避けたい
 「自分や家族が高熱を出した」時に、コロナかインフルか自己診断は難しいです。医師の診断でもPCR検査やインフルエンザ検査で確定させていますが、いずれにせよ今シーズンは特に素早い対応を一人一人が心掛けることが死亡者の抑制につながると言えます。まずはどちらの予防にも有効な、手洗いや換気に気を付け、その上自助努力でできるインフルエンザの重症化予防(予防接種)を行うことは合理的だと考えます。
 起きる確率は不明ですが、仮にインフルエンザとCOVID-19が同時に流行した場合、医療機関は混雑することとも予想されます。その際待合室などで、「本当はインフルなのに病院でコロナに罹る、あるいはその逆」となる“二重遭難”的な悲劇は回避したいと考えます。そのためにも今年のインフルエンザ接種実施率が100%に近づくことを祈ります。
 
 

【文責:田村和広】

 

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