情報検証研究所のブログ

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【一都三県と北海道の対応を比較】 ~COVID-19対策、まずは各知事がベストを尽くせ~

NHKの報道によれば、
“東京、埼玉、千葉、神奈川の知事が2日、特別措置法に基づく緊急事態宣言の発出を速やかに検討するよう要請したのに対し、西村経済再生担当大臣は飲食店への営業時間短縮の要請を午後8時までに前倒しすることなどを求めました。(NHK特設サイトより引用、太字は筆者)”

東京都 時短要請 午後8時を検討も 周辺3県で対応可能か協議 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

とのことであり、
また時事通信の速報によれば、
菅義偉首相は4日、首都圏1都3県に緊急事態宣言を発令する方向で調整に入った。(1月4日時事通信より)”

菅首相、首都圏に緊急事態再宣言へ 「強いメッセージ必要」週内決定(時事通信) - Yahoo!ニュース

とのことです。
緊急事態宣言の是非はここでは問いませんが、大学入試共通テストが1月16・17日に実施されるので、受験生の不安と混乱を未然に防ぐためにも、文部科学大臣の会見なども同時に重ねて報道して頂きたいと思います。
今回は、緊急事態宣言の妥当性ではなくて、「北海道と一都三県の知事の行動」についての比較を行います。
 
 
◆ 北海道の動き
北海道には他都府県に先駆けて“第3波”が到来しましたが、11月中から流行の拡大に合わせて感染予防施策の強度を段階的に強めて行きました。飲食店の営業時間の短縮や地域間移動の自粛など、事業者側にとっては厳しい内容でした。その一方で「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対策【第6弾】」と銘打って独自に補正予算も組み、道民の努力を応援する北海道独自の自助努力も推進しておりました。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/ssa/uchidashi6tsuika.pdf?fbclid=IwAR2Jfv4yCbmSmbmUTteR5JDzsWSOfxWrzaP-CgX3MscLyul6cjOz7_kUVJs

 

それでも、鈴木直道北海道知事への批判の声も聞かれました。
しかし、北海道では第1波に直面した春には、2月28日と4月16日の2度に渡り道独自の緊急事態宣言を発出しておりましたが、今回は緊急事態宣言までには至らずに収束方向に流行を抑制することに成功しております。(グラフ1参照)

f:id:johokensho:20210105172026p:plain


 
◆ 東京都の動き
一都三県を代表して東京都の動きを見て行きます。
東京都は、なにかと小池都知事が目立ち、対策がアピールに偏っている印象を受けます。例えば「東京アラート」と命名して、都庁やレインボーブリッジを禍々しい暗赤色にライトアップしていましたが、今はどうなのでしょうか。
初夏頃までは積極的に自身を露出し都の予算も大胆に使用しましたが、都知事選挙(7月5日)を境に沈黙しているように見えます。これは大変性格の悪い見方をすれば、一連の新型コロナウイルス対策は、自身の「都知事選対策(費)」だったのかと疑いたくなるような手のひら返しです。絶対数では都市の規模の差があって比較しにくいので、10万人あたりに揃えて「新規感染者数」(本来なら「陽性者数」というべき)を比較すると、グラフ2のようになります。

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北海道では感染者数が「10万人あたり3人」を超えた段階で次々と手を打って徐々に収束方向に誘導することに成功しております。
一方東京都では北海道の最大値5.8人を超える5.9人を記録した12月17日に至っても特に有効な対策を実施せず、年末に不自然な突出を観測しました。
もちろん、緊急事態宣言は、「医療崩壊」を予防するための施策であって、一番重要な変数は重症者数と医療キャパシティなので、感染者数の動向だけで適否を判定できるものではありません。しかし、その入り口であり母集団であるのが感染者数であれば、東京都としてはこの動向にもっと敏感であるべきでした。
この点で無策に見えたところからいきなり国に対応を要請する動きに対しては、やや厳しい評価を受けても仕方がないところでしょう。
 
 
◆ 発表数値が「大本営発表」でないと言い切れるか
また、COVID-19にまつわる東京都の開示数値には、当初から疑問を感じることが多いです。曜日の偏りもそうですが、他にも例えば「重症者数」の定義について、厚生労働省と東京都他との間で違いがあるために、その集計数値の信頼性が低下するなどの事例がありました。
私は厚生労働省の開示も一定程度の疑いを持って眺めるようにしているのですが、実は検証のしようがありません。
(余談ですがいつもオープンデータを取得している先である、厚労省報道発表資料の2021年1月のページが1月1日から4日10:00現在、閲覧できませんがどうにもなりません。仕方なくURLの数字を適当に変えて必要頁に到達しております。 報道発表資料 |厚生労働省 (mhlw.go.jp) )
データを検証できない現状は、対米戦争時の大本営の戦果発表が全く検証できなかったことと差がありません。今仮に、COVID-19の各情報について「大本営発表」をされていたとしても、一個人では検証しようがないだけでなく、本来チェックの目を光らせるべき報道機関も実質的には機能しておりませんので気が付かないでしょう。一部を除く野党は尚更です。
特に、「12月31日おおみそか」というタイミングで、東京都の陽性者数が突出した数値(1,337人)になり、お正月から政府に「緊急事態宣言発出」を要請するという一連の動きには、「出来過ぎ感」を抱きます。例えば、「本来元日に計上していた数値を元日の事務を減らす都合で大晦日に前倒し集計」していないかなど、確認ができません。更に言えば、年明け早々に国に「緊急事態宣言」を要請するための演出(数字作り)の可能性さえ疑います。
 
 
◆ まとめ
東京・埼玉・千葉・神奈川の各知事は、もちろん国に「緊急事態宣言」を要請するのも一つの対策でしょう。しかし、順番としては、要請の前に、都民や県民から授権された自分たちの強大な権限の範囲でもっと各種の手を打つべきでしょう。
各施策の評価は人によると思いますが、結果として換気に不利な冬の北海道で感染拡大を抑えていることは事実です。鈴木北海道知事は1981年生まれの39歳と若い人材ですが、この課題に関してはより年長である一都三県の知事よりも、県知事の職責を果たしていると感じます。仮に大人(おとな)なのに責任や悪評を恐れるのであれば、各知事は若い人材に席を譲るべきでしょう。私達の長には、是非とも大人(たいじん)としての識見と胆力を発揮してい頂きたいと願います。
  
 
(おわり)
  
(参照サイト)
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【文責:田村和広】

 


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