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【沖縄県が緊急事態宣言を延長】 ~北海道と何が違ったのだろうか~

報道によれば、沖縄県は8月15日を期限として発出していた緊急事態宣言を8月29日まで更に2週間延長することとなりました。
沖縄県 独自警戒レベル「感染蔓延期」に引き上げ宣言延長へ
2020年8月13日 18時55分
沖縄県の玉城知事は新型コロナウイルスの感染拡大に、依然として歯止めがかからないことから、県独自の警戒レベルを最も高い「感染蔓延期」にあたる第4段階に引き上げるとともに、15日期限を迎える県独自の「緊急事態宣言」の期間を今月29日まで2週間延長することを決定したと明らかにしました。
沖縄県の玉城知事は県庁で対策本部会議を開いたあと、13日午後6時前から記者会見を行いました。
この中で、玉城知事は新型コロナウイルスの県内での感染拡大に、依然として歯止めがかからないことから、県独自の警戒レベルを最も高い「感染蔓延期」にあたる、第4段階に引き上げるとともに、15日期限を迎える県独自の「緊急事態宣言」の期間を、今月29日まで2週間延長することを決定したと明らかにしました。(NHK8/13報道より引用※)”
 
◆  沖縄県は7月に入り、突然陽性者数が増加
 
沖縄県では、4月30日以降、新規陽性者の発生が観測されませんでした。7月8日、県外の感染経路からと見られる新規陽性者が3名確認され、その後急速に拡大し現在も日々70名前後で横ばいとなっております。7月31日に発出され、8月1日から15日までの期間を定めた緊急事態宣言の効果は、一層の拡大は抑止した可能性がありますが、収束に向かわせるまでの抑制効果は感じられない状況です。(グラフ1参照)
 

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◆ 2月の北海道では緊急事態宣言後、一旦収束
 
北海道では、2月28日に緊急事態宣言を発出し、3週間後には一旦の終息が確認できたとして、3月19日に宣言を解除しました。(グラフ2参照。なお、解除から3週間後に再度陽性者数は拡大します。)

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沖縄県と北海道では何が違ったのか
 
沖縄県と北海道の違いについて、2つの差異が際立ちます。(なお、違いの全てを列挙できている訳はなく、筆者の恣意的な選択バイアスがかかっている可能性が高いです。)
 
事実の整理:
1:陽性拡大開始から宣言までの期間:
沖縄県29日間(7/3 ~7/31)⇒およそ4週間
北海道14日間(2/14~2/28)⇒およそ2週間
 
2:宣言当日の新規陽性者数
沖縄県77名⇒北海道のおよそ6倍
北海道12名
 
差異1:「緊急事態」宣言に至る反応の速さ
陽性が拡大し始めてから、北海道は2週間で緊急事態という対応だったのに比べ、沖縄県は4週間ほどが経過してからの緊急事態対応になりました。沖縄県では対応までに北海道の約2倍の期間が経過しております。これは、イギリスが、他国よりも遅い対応をした結果、早期の対応をした他国よりも感染が蔓延したことを想起させる違いです。
 
差異2:「緊急事態」認識センサーの感度
緊急事態宣言当日の新規陽性者数は、沖縄県が77名、北海道は12名です。沖縄県は北海道の約6倍の規模になってからの緊急事態宣言です。これは、2月時点の北海道に比べて沖縄県の認識感度が低かった可能性が高いでしょう。
 
SARS-CoV-2は、2月時点では未知の度合いが高いウイルスでしたが、現在では未知の要素が少し減少し、高齢者と基礎疾患のある方以外の人々にとっては重症化しにくい等の情報が徐々に周知されております。センサー感度の低下は、このように恐怖感がやや減少していることも関係がありそうです(筆者の印象に過ぎません)。
 
 
◆ キーワードは「国民の馴化」
 
心理面の変化については、明確な根拠数値を提示できないので事実としての差異を挙げることはできません。そのため個人的な推測に過ぎませんが、国民全体の馴化(:刺激になれること)も一つの背景だと考えております。2月以来、国民は繰り返し感染拡大の警告を受けてそれを正面から受け止めて自粛対応をしてまいりました。しかしそれも半年が経過しました。
他国の状況を横に置くと、医療・介護従事者の奮闘や国民の協力の甲斐もあり、日本においては死亡者数が極めて低く、自粛対応で払う経済的または心理的犠牲は割に合わないと感じる人も増加していると推測します。また、現段階では日本国政府は緊急事態とは認識していません。
これらを合わせて考えると、国民は都道府県独自の緊急事態宣言を受けても、既にその刺激に馴れてしまい、2月から5月頃にかけての緊張感は維持できていないと見ております。
 
 
◆ 秋から冬にかけて
 
この夏の流行は、現在までの推移からは“感染爆発”に至る可能性は高くなさそうに見えます。その一方で、急速に鎮火され消滅する気配もありません。
つまり、感染者が全国に薄く広く存在していることは事実であり、いわゆる“火だね”は全国に潜伏していると想定すべきでしょう。心理的な馴化が進み、緊張感の低下から手洗いや三密回避などの感染予防の手間も徐々に省略され始めた場合、インフルエンザ等と同時の流行も想定すべきでしょう。結果として流行が起こらずに空振りになる可能性も十分ありますが、今から警戒と準備を進めることは大切です。筆者は毎年受けているインフルエンザ予防接種を今年はいつもより早めに受けるでしょう。
 
 
(おわり)
 
(引用サイト)
==========
沖縄県陽性者状況一覧表 

https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/hoken/chiikihoken/kekkaku/press/documents/69hou1405rei.pdf

 

 

【文責:田村和広】

 

 


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