情報検証研究所のブログ

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【検証アップデート:日本の新規陽性者数推移1207】~ブレーキの効きがあやしい~

日本におけるCOVID-19“第3波”は、一本調子の急拡大は回避できたことが確認できますが、第1波や第2波のような急速な沈静化が実現するかどうかはまだわかりません。
 
 
◆ 日本全体の新規陽性者数推移(移動平均
 
日本全体の新規陽性者数の推移(グラフ1参照)を7日移動平均で追うとピークアウトしたようにも見えますが、収束局面に移行するのかどうかよくわかりません。SIRモデルの考え方であれば、ここは急な減少ステージに移る時期と思われますが、冬を迎え、気温の低下に伴う感染症の流行促進要素の増進と営業自粛等の抑制効果との綱引きで拮抗してしまいそうな気配です。
 

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◆ 週ごとの新規陽性者数推移
週ごとの推移を重ねて表示すると(グラフ2参照)、明らかに陽性者数の拡大は頭打ちです。ただし、3週に渡ってほぼ同じ水準にとどまっており、来週も目立った低下がない場合には、高い水準を維持したまま平衡期に遷移している可能性も考える必要があるでしょう。

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◆ エリア別推移状況(実数)
  
[ 東京都 ]
陽性者が最も多く発生している東京都では、12月6日になってやっとピークアウトのサインが出ました。振り返ると、その約2週間前にあたる11月21日にGo To見直し発言が広く報道されました。これにより市中に警戒感が広がった可能性があり、時系列的には相関関係がありそうに感じます。ただし、現段階ではまだ印象にすぎません。
 

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大阪府は、新規陽性者数の推移(グラフ4参照)ではピークアウトが確実になってきました。赤い棒グラフは毎週日曜日を表しますが、2週連続で前週よりも減少しております。

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[ 北海道 ]
北海道でもピークアウト自体は確認できる(グラフ5参照)のですが、ここに少し懸念があります。実は、北海道ではいち早く11月17日の時点で札幌限定ながらもステージ3から4相当に引き上げを実施しており、強めの対策を打ち出していました。そこから2週間後の12月1日頃には確かに減少傾向は示しておりますが、その水準の低下度合が期待ほどではなく、その減少速度はとても緩やかな状況です。ゆっくりではあっても、このまま低下し続けることを期待します。
しかし希望を排除して考えると、例えば冬の本格化に伴い空間の密封度合いが高まる等の流行促進要因が強まると、縮小均衡が破れて収束の底が浅いまま反転上昇する可能性もあるでしょう。

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◆ 陽性者数は一旦天井形成だが再急騰も警戒
新規陽性者数の動向については、一旦ピークアウト(天井を形成)した可能性が高いですが、重症者数は徐々にしか減少しませんので、早い時期にトレンドが反転し再拡大に移行すると医療機関・保健所・高齢者施設などは休む間のない連続対応を強要されることになります。そうなると、各施設従事者の方々の疲労が心配です。私はまず、自分が感染して医療の負担を増加させてしまうことのないように、予防を徹底します。
(勿論、症状が出た方は躊躇なく電話相談し、遠慮などして無用なリスクを取らないようにすべきことは言うまでもありません。)
 
感染を抑制するために“ブレーキ”をかけても、第1波や第2波の時に比べてダイレクトな効き目を感じないのは私だけではないと考えます。
「緊急事態宣言」発出などを回避して年末年始を迎えられるように、再度感染対策を徹底して参りましょう。
  
(おわり)
 

【文責:田村和広】

 


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