情報検証研究所のブログ

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【検証:第3波ピークアウトの兆候】 ~問題は、ピークアウトか一時的な停滞かの判別~   

11月に入り新型コロナウイルス(COVID-19)の国内新規陽性者数が増加し始めると、各メディアは「新規感染者(正しくは陽性者)が過去最高〇〇人」、「▽▽日連続で〇〇人越え」のような報道を続けておりました。そしてここ数日、新規陽性者数が落ち着き気味になると今度は、「重症者数が連日過去最高の〇〇人に」のように重症者や死亡者数に焦点が移行しております。“煽り”を疑いたくなりますが、これは常に「ニュースバリュー」を追求せざるを得ない性質を理解する必要があります。これらをどう感じるかの半分は、受け手側の知識や心理、そして立場の違いによるものでしょう。
  
 
◆ “第3波”ピークアウトの信号
  
10月以降の新規陽性者数の推移を視覚的に追うにはグラフが適切ですが、曜日変動の影響も大きいので日々の実数を追うだけでは、“ジェットコースター”状態で上下に変動しますので、方向感を持ちにくいです。そこで、曜日が追えるように「土曜日を青棒、日曜日を赤棒」としたところ、週のリズムも見やすくなりました(グラフ1参照)。

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グラフ1で、土曜日(青)は増加ペースが鈍化の兆しを、日曜日は明確に「上に凸(加速度が減少期に入った)」を示現しております。
これは、2週間前の推定感染日基準で考えると足元ではピークアウトし11月30日現在は収束方向に向かっていると推定できる状況です。
   
 
◆ 新規陽性者数推移の各週比較
 
11月に入ってからの新規陽性者数の推移を週毎に比較すると、先週(11/24・火~)明確に停滞期入りしたことが確認できます(グラフ2参照)。

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これは、推定感染日を遡及すると11月8日(日)~14日(土)の週にピークアウトしていた可能性を示唆しております。この頃を振り返ると、北海道で再度流行が拡大し始め「11月7日北海道で警戒ステージを2から3へ引き上げた」というイベントが目を引きます。これが一つの警鐘として行動変容を促し始めた可能性はあるでしょう。
  
 
◆ 収束・平衡期の期間的な長さは誰にも分らない
 
これらを捉えて、「“第3波”は既にピークアウトした」、「ピークアウトしているのに今からGo Toキャンペーン停止や自粛、ましてや再度緊急事態宣言発出などは論外」という主張もあります。
「“第3波”はピークアウトしている可能性が大きい」という主張は合理的だと考えますが、その一方で「ゆえにこのまま収束するから経済対策を維持・強化すべき」という論には飛躍を感じます。
なぜならば「収束方向に遷移する期間はどれくらいあるのか」「平衡状態の水準はどれくらいか」といったテーマの検討が全くなされていないからです。つまり、「冬期要因が日に日に強くなって行き、収束が浅く、平衡状態の水準が高く、期間が短ければ、短い“踊り場”を形成した後“第4波”に移行する可能性は否定できない」ということです。
また今回は従来とは違う状況の地域も多く、地域的な内訳も分析する必要があるでしょう。
  
  
◆ まとめ
 
  1. 確認日ベースでの新規陽性者数は、ピークを形成しつつある
  2. 推定感染日ベースでは11月8日~14日頃にピークアウトしいていた可能性がある
  3. 陽性者数がどの水準まで低下し、いつまで横ばいを維持するのかはわからない
  4. 全体と同時に地域ごとの流行の拡大・収束傾向を分析することも必要である
 
「新規陽性者が停滞し、重症者数が急増し始める」という傾向は、その“流行の波”が成熟してきたことを象徴していると考えます。その一方、だからと言って侮ることも控えたいと私は考えます。なぜなら、「波と波の間の長さは誰にも分らない」からです。つまり冬の寒さが本格化する中で予防策を怠れば、すぐに次の波がやってくる可能性も十分あり、高水準で平衡を維持していた場合には桁が変わるので、それは回避したいからです。
現在私達に必要なのは、油断せず、落ち着いてマスクや換気などの基本的な予防対策を徹底することだと考えます。
 
(主要地域別の傾向については、別稿で分析します。)
  
(おわり)
 
(参照)
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【文責:田村和広】

 


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