情報検証研究所のブログ

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【第一波 vs.“第二波”の比較】 ~要入院者と重症者~

沖縄県では入院者が増加したため病床が逼迫する状況となりました。また、医療機関等の院内感染も発生し、看護師など医療従事者が不足しはじめ、県外からの応援を要請する事態に直面しております。
東京都では沈静化の傾向が見られますが、入院者と重症者が増加中の大阪府でも病床等の使用率が高まっており、全国的にはCOVID-19の重症者と医療のひっ迫に対する懸念が徐々に高まる地域も見られます。そこで、今を”第二波”と認識した場合、どの程度の状況が予想されるのでしょうか。
 
◆ 要入院者と重症者の大局観
そこで、冷静に要入院者(※)と重症者の推移について第一波と“第二波”(7月~8月)を比較し、現状とごく近い将来の見込みを確認します。(グラフ1参照)
※ 「要入院者」とは、厚労省報道発表資料中では“入院治療等を要する者”、「重症者」とは、“入院治療等を要する者のうち重症者”と記載されている分類を指す。
 

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◆ 第一波のピークとの比較
    要入院者        重症者
第一波:12,080人(5/5)     328人(5/1)
第二波:14,160人(8/11暫定)  243人(8/17、増加中)
現在、陽性者自体の増加は穏やかに収束へ向かっておりますが、その傾向は要入院者数でも確認できます。今後反転増加する可能性も大いにありますが、暫定的に収束傾向と認識すると、第二波における要入院者のピークは8月11日の14,160人となり、これは第一波と概ね同水準です。PCR検査対象の要件が大きく異なるので、陽性者数では4月頃と8月頃をそのまま比較することができませんが、入院を要する者の数や重症者数であれば、“おおらかには比較可能ではないか”と感じさせる数値です。
 
◆ 第二波にはタイムラグが
 
グラフ1で見る限り、第一波ではほぼ連動していた要入院者と重症者の推移ですが、第二波では2~3週間のズレが発生しております。これは、PCR検査対象として、第一波の頃は“発熱4日以上”だった要件が、第二波の時期には緩和され、「より早い段階で無症状者まで含めて捕捉し始めたためにより早くから入院対象となった」ことを示唆していると筆者は考えました。
ここから、単純に推測しますと、第二波の要入院者数ピーク(暫定)である8月11日から2~3週間後は、8月25日~9/月1日となります。
◆ 単純計算で見積もる重症者ピーク
2~3週間後に重症者数もピークを打つと仮定すると、計算上331人から408人まで増加します。ただしこれは、あくまでも次の2点の仮定条件を前提とした計算です。
仮定1:このまま2~3週間増加が続く
仮定2:増加ペースは最近2週間の実績値(11人/1日)を保つ
 
◆ 秋から冬にかけての“第三波”に備えて
 
現在の陽性者数増加を第二波と考えた場合、かつて尾身会長が表現していた“オーバーシュート”の状況は未然に防げそうな気配です。勿論油断はできませんが、陽性者数の推移のみならず、要入院者で見ても明らかにトレンド転換が示唆されております。(重症者と死亡者の転換は未だ見られず。)
しかし、沖縄県大阪府で起きた現象は、日本においても、経済活動を平常に近づければ、「ごく短時間で医療の備えが不十分な状況になり得る感染症である」ということも示しております。特に、高齢者施設と医療施設でのクラスターは注意していても一定数発生してしまうことも解りました。従って、今後憂いなく経済活動を活性化させるためにも、秋から冬にかけての発生が予想される“第三波”を前提として、改めて対策の充実が重要になるでしょう。
 
◆ 積み残し論点
敢えて積み残しの論点として提示のみ行います。
今後の論点:
「年齢層で異なる余命期間や、予後(病気からの回復)の状況予測を踏まえ、冷静な“コスト対効果(※)”を議論すべきではないか」
「高齢者と基礎疾患のあるハイリスク層」と「それ以外の層」という2つの塊に分けた場合、COVID-19の危険度は大きく異なります。世界全体としての死亡リスクは猛烈なインフルエンザと同等以上ですが、日本のハイリスク層以外にとって、現状の懸念は過剰である可能性があります。スウェーデンの状況やニュージーランドの状況など、貴重な比較対照データは徐々に揃い始め、規模的にも時系列的にも信頼性が向上しております。
しかし日本では、「命の選別をするのか」「命よりお金か」という批判も予想され、なかなか提議できないテーマです。これは大きく重いテーマであり本稿の趣旨を逸脱しているので、別途投稿したいと考えております。
※ コストとは、経済的のみならず人的・設備的な面も含めた総合的なコスト
(おわり)
(数値データ元サイト)
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厚生労働省報道発表資料(8/17):

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13013.html

 

 

【文責:田村和広】

 

 


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