【検証：The New York Timesは不思議なメディア】～コロナ禍「情緒的扇動優先」したメディアの悲惨～

東洋経済オンラインに、「コロナ禍｢経済優先｣したスウェーデンの悲惨」という記事が掲載されました。元記事はニューヨークタイムズだと思いますが、微妙な内容です。自説を裏付ける事例を並べて「論理的」にストーリーを紡いていますが、全く信用できない内容です。

以下添付記事より一部引用し「””」、私が感じる問題点を「⇒」以下に列挙します。
”スウェーデン方式の成果はこうだ。まず死者数がロックダウン（都市封鎖）を実施した近隣諸国を大幅に上回った。”
⇒　全く根拠のない、事実をゆがめた主張です。近隣諸国が具体的にどこを指すのか、人口や面積比などで比較条件を揃えているのかなど、色々な問題点がありますが、事実は大きくことなります。一部の低い国々と比べて”大幅に上回った”と言っているだけです。

実際、7月20日現在、
スウェーデン死亡者　5,619人、死亡率0.056％
イギリス　　死亡者45,385人、死亡率0.067％
イタリア　　死亡者35,045人、死亡率0.058％

他にも、もっと悲惨な欧州諸国が沢山あります。

”高い死亡率と他国同様の経済悪化というスウェーデンの悲惨な結果は、「国民の命か、経済か」という選択肢が間違っていることを示唆している。行動を規制しなければ、生命と雇用の両方が犠牲となりかねない。”
⇒”高い”とは比較ですが、上記の通り、比べる対象の取り方次第で高くも低くもなる、諸国並みの数値です。
”スウェーデン方式の結果、死亡率が高まったことは何週間も前からわかっている。ここに来て新たに見えてきたのは、経済に隣国と同程度の打撃が出ているという現実だ。スウェーデンは経済活動に制限を加えなかったにもかかわらず、ビジネスは壊れ、景気が後退している。”

”スウェーデンの中央銀行によれば、同国経済は今年4.5％のマイナス成長に陥る見通し。（略）これはデンマークがパンデミックで受けた打撃とほとんど変わらない。デンマーク経済は、同国の中央銀行によると、今年4.1％縮小する見通し。（略）
要するに、スウェーデンは期待された経済的なメリットを得ることもなく、圧倒的に高い死亡率を抱え込んだことになる。（略）ノルウェーの中央銀行によると、変動の激しい石油・ガス部門を除く本土経済は今年3.9％のマイナス成長となる見通し。”
⇒　”要するに”と強弁しておりますが、根拠とする比較対象がスウェーデンより状況が良い2ヵ国だけでは、説得力はありません。もっと多数か欧州全体などの比較でなければ是非の判断はできません。他の主張も同様におかしなものが多いです。しかし検証せずに東洋経済やニューヨークタイムズを信頼している読者には、「なるほど」と感じさせるには十分なストーリーと根拠でしょう。
⇒数字だけですが、スウェーデンをはじめとして欧州諸国他の動向をよく把握した上でこの記事を読むと、「ニューヨークタイムズは相変わらずの品質（アサヒクオリティ）だなあ」と感じます。話の筋は通っており、主張には”根拠ラシキモノ”が添えられておりますが、全く論理的ではない文章です。