情報検証研究所のブログ

オンラインサロン「ファクトチェック機関「情報検証研究所」」の活動や検証報告を公開します。

【検証:65歳以上人口と”死亡率”】 ~落ち着いた欧州、上昇中の南米、低いアジア~

 ずっと待っているのですが、COVID-19パンデミックについて、信頼のおける機関からの「年齢階層補正済死亡率」データが見当たりません。(精密なものがあれば是非ご教授下さい。)
「無いなら創ろう」ということで、パブリックデータから自作してみました(と言っても捏造ではありません。念のため)。
その結果「想像イメージでしかなかった世界の姿(=妄想)」を、ある程度「ビジュアル化(≒現実の姿)」することができたので共有致します。(グラフ1)。
混とんとした世界各国の状況がある点でクリアに分離抽出できた気がします(個人的感想)。とはいえ私の変な世界観なので誤導に注意しながら順に解説します。

f:id:johokensho:20200723090214j:plain

 

◆ 第一波が終息した欧州


あれほど悲惨な状況になっていたヨーロッパ諸国ですが、現在は殆ど沈静化しており、第一波は収束したと言っても言い過ぎではないと思います。
7月20日現在、主な欧州諸国の新規感染者数・死亡者数(および累計死者数)は次の通りです。
スペイン新規感染者0人、新規死亡者0人(累計死亡者数28,420人)
イタリア  218人、 3人(累計35,045人)
イギリス  726人、 27人(累計45,385人)
フランス    0人、   0人(累計30,152人)
ドイツ   309人、   1人(累計9,091人)
スウェーデン 0人、 0人(累計5,619人)
ベルギー    0人、 0人(累計9,800人)
ノルウェー  0人、 0人(累計255人)
オランダ  146人、 0人(累計6,155人)

参考:日本  454人、 0人(累計985人)
(元データ:厚生労働省の報道発表資料7/20 )
 
欧州諸国全数ではなく主な国だけをピックアップしておりますが、「自説に都合の良いデータだけ抜き出した」訳ではありません。(それは厚労省のデータで検算して頂けたら確かめられます。)


◆ 死亡リスクと年齢階層
 
ところで、日本におけるCOVID-19の年齢階層別致死率(%)は、次の通りです。
0-9歳 0%
10-19歳 0%
20-29歳 0%
30-39歳 0.2%
40-49歳 0.1%
50-59歳 0.4%
60-69歳 1.5%
70-79歳 5.6%
80歳~11.9%
厚生労働省新型コロナウイルス感染症 診療の手引き8頁「厚生労働省新型コロナウイルス感染症の国内発生状況(2020年4月17日掲載分)より引用」

https://www.mhlw.go.jp/content/000641267.pdf


厚労省の資料によれば、日本において50歳未満の感染者にとっては特に高い致死率ではないようです。
一方、60代以降の世代にとっては警戒が必要な、リスクが高めの感染症と考えるべきでしょう。
 


◆ 「確認感染者数」では実相が掴めない
 
今回の感染症の実相を把握しようとしても、国ごとの「検査」に関する方針次第で大きくぶれてしまう傾向があり現段階で発表されている確認感染者数では上手くつかめません。一方、「確認感染者数」に比べ、死亡者数はよりは実相に近い状況を反映していると考えました。死亡数は、捏造も隠滅も現代国家では難しいからです。もちろん、何を死因とするかについては国による計数基準の違いがあります。しかし桁が変わるほどの操作はしにくい数値でしょう。
 


◆ 欧州の高齢者階層人口に対する死亡者数の比率
 
そこで、「一旦感染状況が収束しつつある欧州」の「死亡者数」について、実際に「数多く死亡している高齢者層」に焦点を当てて、「65歳以上人口ベース死亡率(※)」を計算してみました。
( 65歳以上人口ベース死亡率 )=(死亡者数)÷(65歳以上人口)×100
(※ ご注意:この計算において「死亡者数」は年齢階層別の諸国データがないので絞れていません。若年層も混入したままの数値です。そのため、正確な「年齢階層別死亡率」とはなっておりません。あくまで参考値に過ぎませんので引用などの際にはご注意ください。)
 


◆ 主な欧州諸国の“死亡率”(※)は0.16%
 
欧州23ヵ国で65歳以上人口は合計約1億12百万人、死亡者数は183,589人なので、65歳以上人口ベース死亡率は0.16%となりました。(全人口ベース死亡率は0.033%。)最高はベルギーの0.44%、途中で政策を変更しましたが手当が遅れたイギリスで0.36%、高齢者施設の悲惨さが際立ったイタリアでも0.25%でした。(表1、およびグラフ2)
一方、穏やかな対策をとり、高齢者施設クラスター対応でやや失敗を犯し、80歳以上の患者をICUに入れないスウェーデンでさえ0.27%に留まっております。
やはり感染症の流行状況には、国や地域の医療・社会政策、国際的経済活動、国富、健康状態など、かなり多くの要素が絡み合い、なかなか明快な因果関係の分析・抽出ができません。
 

f:id:johokensho:20200723090527j:plain



◆ 全年齢ベース死亡率と、65歳以上人口ベース“死亡率”の対比
 
次に、欧州だけではなく、世界各国に目を向けました。
全年齢ベースの一般的な死亡率と65歳以上人口ベース“死亡率”を比較すれば、国ごとの特徴が何か出るのではないかと考え、その相関図(散布図)を作成したのがグラフ1です。日本以外は“死亡率”0.05%以上の国のみを表示しました。
ここで、赤いマーカーは欧米諸国、緑のマーカーは南米諸国、青いマーカーは中東・アジア(アフリカ)です。綺麗に分離されました。「成熟国」の赤いラインと、「新興国」の緑(青)ラインは人口構成における年齢階層バランスが違うのです。(人口ピラミッドで見ると、成熟国には「釣鐘型」、新興国には「富士山型」が多い。)
東(南)アジア諸国ではパキスタンだけ出てきますが、それ以外は日本並みに低水準なので塊になって見えにくいので表示しておりません。



◆ 大きくても”死亡率”は 0.2%~0.5%
 
現段階では、成熟国も新興国も65歳以上ベースでみると“致死率”は似たような水準です。相対比較に過ぎませんが「対策が上手く行かなかった側」の国々でも、65歳以上人口ベースで0.2%から0.5%の間に収まっております。
ただし、南米・アフリカ・アジアの一部諸国は、現在死亡者数が上昇中ですから、更に伸びることは確実です。
 


◆ 計算上の日本の潜在的死亡リスク最大値は57,600人
 
日本において、仮に、高齢者施設でも医療機関でも家庭でも、感染症対策を全くとらずノーガードで感染症と対峙し欧州平均並みに死亡者が出ると仮定するならば、計算上それは57,600人となります(計算:65歳以上36百万人×0.16%)。現実には、何等かの基礎疾患を抱える高齢者の多くは、医療施設か高齢者施設に居住しており、厳格な対策による保護下にあります。したがって、計算の前提条件は現実にはあり得ず、上記の仮計算は本当に幻の数値です。ポテンシャルを把握するためだけの計算です。ただし、日本の高齢者施設クラスターでは入所者95名の約75%が感染し17名(入所者の18%)が亡くなる事例も現実に起きております。条件次第では局所的にならば発生し得る数値です。従って、「非現実的だ」とは言い切れないと考えます。
 


◆ 現在、クラスター把握と対応は迅速
 
現在、舞台や病院・高齢者施設において何件ものクラスターが発生しておりますが、いずれも発見し次第厳格な対策が取られているようです。日本において3月から4月にかけて発生した悲惨なクラスターは、「無症状者からの感染」が知られていなかったことなどの情報が不十分だったり不慣れだったために発見から初動までの間のタイムラグが大きかったことが背景でした。現在の素早い対応から考えると、その改善はなされていると言えるでしょう。従って現状、巨大なクラスターが発生する見込みは高くありません。
そのため、欧州並みの“死亡率”に達する可能性は、ゼロではありませんがかなり小さいでしょう。
グラフ1については、ミスリードする可能性があるのでこれ以上はコメントしません。皆さんの知見と融合すると、一層理解が進むことでしょう。
 


◆ COVID-19は、20世紀以降の大きなパンデミックの一つ
 
20世紀以降、多数の死亡者が発生した感染症パンデミックは次の通りです。
1918-1919スペインインフルエンザ(A/H1N1亜型)4,000万人~
1957-1958アジアインフルエンザ (A/H2N2亜型)200万人
1968-1969香港インフルエンザ (A/H3N2亜型)100万人
(引用:国立感染症研究所資料より

http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA02.html
2020年7月20日現在、世界全体では死亡者が60万人を越え、日々の新規死亡者数も3,000~6,000人の巡航ペースなので、100万人に到達する可能性も十分あります。感染症の歴史に残る大きなパンデミックとなることは間違いないでしょう。

 

【文責:田村和広】

 

 


<メンバー募集中!>
どういう議論を元に検証記事が出来あがっているのか?!
”議論の内容を知りたい!”という方、”議論に参加してみたい!”という方は、
ぜひご入会下さい!

lounge.dmm.com