情報検証研究所のブログ

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【検証:スウェーデンとノルウェーの感染者数推移】

スウェーデンノルウェーの累計感染者数比較

 5月22日現在の感染者数は、スウェーデンが32,172人、ノルウェーが8,309人であり、約4倍の差がある。一方人口はスウェーデンが1,022万人、ノルウェーが532万人と約2倍の開きがある。(正確には1.92倍)(データは、厚生労働省と外務省より)

 そこで、人口比で揃えて感染者数を補正(ノルウェーを1.92倍)すると、ノルウェーは15,953人となり、スウェーデンの約半分の水準である。図1はその補正後の両国の推移を表す。

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 スウェーデン(青線)は4月1日頃から直線的に増加し、5月22日現在も同じ増加率で増勢を保ち2か月に達しようかとしている。
 一方のノルウェー(赤線)は3月中旬からいち早く上昇を始めたが、対応も早く3月12日にはロックダウンを実施した。その約3週間後となる4月6日には日々の増加数に顕著なスローダウンが見られ、以後S字曲線を描いて感染者数の伸びは鈍化した。

 

スウェーデンノルウェーの新規感染者数比較

 

 図2は、両国の日々の新規感染者数の推移を比較したグラフである。

 

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 ロックダウンを実施したノルウェーは実施から約2週間後の3月28日にピークを打ち減少に転じた。なお、遅行指数である7日移動平均線(黒曲線)で、3月28日から4月11日の間は上に凸なので急速に減少速度が上がり、12日頃変曲点を迎え下に凸に転じ、以後減少速度も減速していることが見て取れる。ピーク以降の曲線状況は専門家が示すモデル通りの動きである。

 一方マイルドな感染症対策を実施しているスウェーデンは、4月以降、1日当たり平均約540人の増加を保ちほぼ横ばいである。これは図1で示される同国の直線的な累計増加数からも想像できる通りの結果である。


◆ 比較の結論1:ロックダウン効果はありそう(可能性が高い)

 両国比較の結論として、ロックダウンには効果があると考えることが妥当である。両国の差異についての検証が非常に甘いので断定するのは早計だが、図2において、ノルウェーが明確に減少に転じる4月6日以降の、青棒の面積から赤棒の面積を引いたその差が何らかの事象の効果であり、ロックダウンの貢献度が高いと仮定して結果を次の図3に表す。

◆ 比較の結論2:ロックダウン効果は最大2万人(56%削減)

 4月6日以降の新規感染者数について、スウェーデンから(補正後の)ノルウェーの人数を引いて5月22日まで累計すると20,355人(図3の通り)となり、これを補正後感染者数15,953人と合わせると36,308人となる。この数値を母数とすると計算上約56%感染者数が抑制されていると考えられる(20,355÷36,308≒56%)。

 

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 100%ロックダウンの効果だと言い切ることは不可能だが、他に同様に有力と見做せる対策がない以上、ロックダウンがこの抑制に大きく寄与したと考えることには一定の合理性を認めるべきであろう。
(これらの結論は5月23日現在のものであり今後の実態解明に伴い変更する可能性はある。)

 

【文責:田村和広】

 

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