情報検証研究所のブログ

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【 日本の5月末死亡者数予測と今後の施策 】 ~5/5までの推移から、5月末までを予測(:SIRモデルではない)~

感染した方の回復を心より祈ります。

 

4月上旬頃の日本では「感染爆発が起きるのではないか」という不安がありましたが、5月6日現在、局地的で小規模な院内感染を除き“感染爆発”は一旦回避できております。そのため、感染者数の爆発的な増大や致死率の急上昇などの予測計算の精度を著しく下げる要素が遠ざかったので、改めて死亡者についての5月末時点の見込みを予測しました。これまでの感染者数の推移、感染確認から死亡に至るまでの期間、致死率推移、の3点からの計算となります。

政策判断の妥当性を考える前提だと思いますので、計算を公表致します。リスク比較の基礎となることを目指しております。

 

 

◆ 計算方法:

① 3週間前の新規(確認)感染者(※1)に3.9%(※2)をかけて当日数を予測

② 5月5日までは実数を、6日以降は当日予測を加えて予測値を作成

③ 26日から31日は、直前1週間の予測値平均である「9人」で横ばいと仮定

※1 タイムラグは、実績値のずれを検証し、妥当な期間を「3週間」とした。

※2 致死率が最もぶれないのは「1週間」のタイムラグであり「3.9%」前後であったため。

 

 

◆ 計算結果:5月末時点で864人(累計見込値)

5/5日現在、日本の死亡者数累計は521人であり、ここから26日後に343人発生する見込みである。再度の感染拡大がなければ、1,000人前後で一旦収束となりそうである。(ただし、第三波・第四波があればより増える。)

(※ 見込値のお取り扱いにはご注意ください。)

 

季節性インフルエンザを1,000~10,000人程度とすれば、それと比較して「COVID-19が猛烈に危険である」とも言えないが、「ちょっとした風邪」とも言えない。もちろん各個人がどのように感じるかは一様ではない。

(計算の元となるデータは厚生労働省ウェブサイト「報道発表資料」より引用)

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/index.html

 

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日付 実数値 増加数
2020/5/5 521 11
日付 予測値 予測増加値
2020/5/6 539 18
2020/5/7 558 19
2020/5/8 580 23
2020/5/9 605 24
2020/5/10 627 22
2020/5/11 642 15
2020/5/12 656 14
2020/5/13 671 15
2020/5/14 688 16
2020/5/15 706 18
2020/5/16 723 17
2020/5/17 737 14
2020/5/18 745 8
2020/5/19 752 7
2020/5/20 763 11
2020/5/21 772 9
2020/5/22 780 8
2020/5/23 790 10
2020/5/24 802 12
2020/5/25 810 9
2020/5/26 819 9
2020/5/27 828 9
2020/5/28 837 9
2020/5/29 846 9
2020/5/30 855 9
2020/5/31 864 9

◆ 予測からわかること

① 新規感染者は一旦収束が見えてきたが、死亡者累計は当面増加することが予想される。

② しかしこの状況ならば日本の死亡者数は欧米各国のような数千~数万規模にはならない。

③ 総合的な人命救済の観点から、一旦経済の破滅を回避する方に政策判断の重点をシフトすべき。(休校解除、自粛緩和など)

 

 

◆日本を特別視することも自粛すべき

北海道の事例を見ると、自粛を解除すれば感染者は再度拡大する可能性は十分あると考えるべきである。そして感染の具体的事例を見ると、日本といえども院内感染が広がれば多くの方が重篤になり多数の死亡者が発生している。

また、高齢者の危険性や感染の広げやすさは知られているが、実は若年者も感染しにくいのかどうか未確定である。各種の自粛措置、例えば学校休校措置が解除されれば、無症状若年感染者を経由して、高齢者や基礎疾患のある方々への感染リスクが再度高まる可能性も否定できない。

 

 

◆真の感染者数は不明である

あくまでも、現在把握・公表されているのは確認がとれた感染者の数であり、実際の無症状感染者がどれほど市中に存在するのかは不明である。米国NY州などでは、抗体検査から逆算して確認感染者数の8倍程度は既に感染していた可能性が指摘されており、日本も神戸大学などの調査で確認感染者数より何倍も多くの感染者が実際には存在していることが予測されている。(いずれの抗体検査も一定のバイアスがかかっている可能性があるので参考程度に過ぎないが。)

国内外および国内での人の移動制限を外せば、日本も例外ではなく感染が広がる可能性がある。再度感染が始まれば適時適切な対策を打つ体制を準備しつつの自粛解除が必要がある。

 

 

◆合理的な政策決定のために実態把握の調査をすべき

抗体検査の精度も色々なので、難しい面はあると想像するが、真の感染者数により近い計数方法を考察し実数把握に努めるべきである。5月6日現在でも大分わかってきたが、この病は感染力が高く、特定の層を対象として致死率も低くない。厄介なことは確かで全体としては季節性インフルエンザよりも危険性は高いが、桁違いではなさそうである。

そうであれば現在は、定量的なリスク評価を行い不況がもたらすリスクとこの病のリスクとを比較し、政策としてはバランスを取るべきステージだろう。その判断のための基礎として、実態把握の調査を実施すべきである。

 

【文責:田村和広】

 

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