情報検証研究所のブログ

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【国連科学委員会報告書は日本にとってチャンス】 ~福島第一原発事故 「将来の健康影響可能性低い」~

国連科学委員会は、10年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故による影響について「被ばくが直接の原因となる健康への影響が将来的にみられる可能性は低い」と報告しました。
 
この報告書は、日本においてもっと大きく報道して頂きたいと感じます。
 
NHKによれば、同報告書では
”被ばくと住民の健康への影響について、「被ばくが直接の原因となる発がんなどの健康への影響が将来的にみられる可能性は低い」”
”被ばくした子どもの間で甲状腺がんが増えている原因は、高感度のスクリーニングによる検査を行った結果”
”いずれの年齢層でも被ばくが原因の甲状腺がんの増加はみられそうにない”
福島第一原発の作業員についても、白血病とがんの発生が増えることはみられそうにない”
と指摘・結論づけているとのことです。
 
 
◆ 2014年報告の見通しに沿う内容
国連科学委員会では、2014年(※)にも同様の調査報告をしており、今回(2021年)の報告でも、その時に示した将来見通しが妥当だったことを裏付ける結論となっております。
※ 2014年当時の国連報告書(4月2日リリース):

https://www.unic.or.jp/news_press/info/7775/

 

 
◆ この報道ぶりで報道機関かどうかがわかる
事故からちょうど10年となる日を目前に発表された今回の報告は、科学的な検証報告としては大変重要である一方、内容は過去に示した予測通りの妥当な(マイルドな)範囲に留まる印象です。そのため、耳目を集めるという意味での「ニュースバリュー」は高くなく、報道ぶりは低調です。NHK・読売・AFPは比較的詳細に報じておりますが、他にはあまり目立った報道を見かけません。ただし、明日「3月11日」という区切りの日に合わせて準備した紙面で報じるかもしれませんので、現時点では報道ぶりについて断定的な判断はできません。
 
◆ 政府は積極的な広報を
そう遠くない時期に、政府は原発処理水の放出決断も迫られると予測しております。現状はまだ韓国などの”難癖”や国内外の不本意な評判などもあり、その決断を受け入れてもらう環境作りに苦労しております。そのような状況にある日本にとって、今回の報告書は科学的・客観的で貴重な材料です。これは、国内外に周知して社会的環境整備を促進するチャンスでしょう。
 
(おわり)
 
【文責:田村和広】
 
 

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