情報検証研究所のブログ

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【産業構造の転換は急務】 ~「脱炭素」が苦境の国内製造業にとどめを刺すのか~

国内鉄鋼最大手の日本製鉄が、製鉄所の2基ある高炉のうちの1基を休止すると発表しました。何が起きているのでしょうか?
 
NHKの報道によれば、
”…一連の生産体制の見直しで、国内の生産能力はおよそ20%削減されます。(略)これについて日本製鉄では、国内の鉄鋼需要の減少傾向や海外メーカーとの競争激化などで生産能力が過剰になっていたためとしています。
生産体制の見直しにともなって、会社では2021年度から2025年度末にかけての5年間で、協力会社と合わせて1万人規模に上る人員の合理化を進めることも明らかにしました。(NHK NEWS WEB3月5日より引用”

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210305/k10012899561000.html?fbclid=IwAR2G_BOnIvPZgUbaMvdRSwgBRxLlAZjYvEDdyJKeqzPWebhvJJvqYWKJodUhttps://www3.nhk.or.jp/.../20210305/k10012899561000.html

 
この報道では「国内需要の減少や海外との競争激化」がその原因とされておりますがそれだけでしょうか。
 
◆ 背景にはやはり「脱炭素」の世界的潮流
 
日経新聞は、今回の休止の背景の一つとして次のように伝えています。
”大幅な構造改革の背景にあるのが、2つの苦境だ。1つは国内製鉄事業の収益回復の遅れ。(中略)
2つ目が国内外で加速する脱炭素の流れだ。
カーボンプライシング(CP、炭素への値付け)は市場をゆがめる」。橋本社長は2月14日、菅義偉首相との面会でじかに訴えた。CPは企業の二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課金する制度。高炉では石炭由来のコークスを使うためCO2を大量に発生する。日鉄の排出量は日本企業として最大級の年9400万トンだ。年間で数千億円規模のコスト上昇となる可能性もある。いまの日鉄に耐えられる数字ではない。(日経新聞3月5日より引用、太字は筆者)”
 
◆ 「脱炭素」と日本のリスク
鉄鋼業界の動向を伝える「業界動向サーチ」によると、製鉄業界の(粗鋼生産量)順位は次の通りです。
一位:アルセロール・ミタル(粗鋼9,642万トン、仏)
二位:中国宝武鋼鉄集団(8,707万トン、中国)
三位:日本製鉄(4,922万トン、日本)
日本製鉄(4,922万トン)は順位こそ第三位ですが、生産量は上位二社のおよそ半分に過ぎません。(以上「業界動向サーチ」より引用)

https://gyokai-search.com/3-tetu.htm

 

「脱炭素」の流れは少なくとも当面は続くと推測致しますが、日本製鉄のように、国内産業構造の再編を促進する影響が大きいと考えられます。つまり製造業を中心として日本の産業が”空洞化”するリスクは大きく、今回の件はその兆しとも考えられます。
フランスは先の大戦でも敗戦国なのに「戦勝国」として国連に参加していることに象徴される通り、抜け目のない国です。中国は言わずもがな、国際的な競争は「狡猾な化かし合い」の場でもあるので、日本も「”罰金”を払わされる(CP課金のような)仕組み(罠)」にいつの間にか陥っている、ということにならないよう注意が必要でしょう。昨年、豊田会長が鳴らした警鐘は心に刻む必要があるでしょう。
私は、現実的かつ具体的な策の一つとして、原発の活用が重要だと考えます。「原発」に対する国内の抵抗は強いでしょうが、「震災由来の事故から10年となる今年」を一つの区切りとして、この問題に正面から取り組む時がきたと考えます。
  
(おわり)
 

【文責:田村和広】

 


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