情報検証研究所のブログ

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【共有:全米保健機関のCOVID-19情報ガイド】 ~日本メディアもこの助言を聞いて欲しい~

COVID-19の日本における課題として、「政策カフェ」の動画(添付)で「メディアの問題点」も指摘されておりましたが、全く同感でした。

 

youtu.be

 

ところで、WHO米国事務局の全米保健機関(PAHO:Pan American Health Organization)が、ジャーナリストに向けて「COVID-19情報を発信する際の留意事項」について、次のような明確なアドバイスを簡潔にまとめて発信しています。
このPAHOのメディアガイドには、日本のメディアの問題点を検証する場合にも通用する重要な論点が含まれていると感じましたので共有致します。
欧米の事例を引き合いに出すと、よく「出羽守」と言われますが、参考になる有益な情報は謙虚に受け止め活用したいと考えます。
“PAHO(Pan American Health Organization),WHO
AN INFORMATIVE GUIDE
Advice for journalists”

https://iris.paho.org/bitstream/handle/10665.2/52392/PAHOCMUPACOVID-1920003_eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y&fbclid=IwAR1e-Q-aam-KCa133q4z8JnV2RrFlA98pB65055YBzyv2lgZcv9EYTntFkY

 

全文和訳しても文字数で8,000前後に収まるのですが、特に重要だと感じるメッセージだけを抽出して以下列挙します。ただし、大胆に意訳・圧縮しましたので訳は正確ではありません。引用の際には必ず英語の原文をご確認ください。
 
(内容の訳はここから)
==================
 
I. 重要なポイント:
  • メディアには、人々に行動変容を促し、流行の拡大を抑制する力がある。また、メディアは、明確で理解しやすい情報を国民に提供する上で重要な役割を果たす。
  • メディアが正確な情報を広めることで、噂や誤った情報が拡がる事態を最小限に抑えることができ、この新しい脅威に対する国民の不安や恐れを減らすことに貢献する。
  • この流行を克服するには個人・地域社会・組織間の連帯が必要だが、ジャーナリストにはそれを促す力がある。
 
II. インフォデミック:インフォメーション パンデミック
 
WHOは、COVID-19パンデミックに加えて、世界は「インフォデミック」に直面していると考えている。
インフォデミックによって、社会の中に「間違い」、「誤った情報」および「噂」が増幅される可能性があり、そのために効果的な対応が妨げられ、人々の間に感染予防策やアドバイスについての混乱や不信感が生まれてしまう可能性もある。そのような影響に鑑み、ジャーナリストには取り組んで頂きたい(次のような)課題がある。
 
III. COVID-19 報道で守るべき各種規範 :
 
  1. 倫理的かつ責任を持つこと
  2. 社会的責任を負うこと
  3. センセーショナルまたは警告主義者になることは控えること
  4. 病気に関する事実と真実の情報を伝えること
  5. 信頼性が高く、科学的で、真実で、検証済みの情報源を使用すること
  6. 国民の懸念を明確化できる科学者・研究者・公衆衛生の専門家・学者および他の分野の専門家の情報を引用すること
  7. 感染症の流行を封じ込め、および/または緩和するのに役立つ対策について真実を報告すること
  8. 流行への対応における彼らの重要な役割を考慮して、医療従事者によって実行された仕事と彼らの状況について報告すること
  9. 回復している患者、病気に取り組むための対策を講じているコミュニティ、または模範的なアプローチをとっている国について報告すること
  10. 問題解決に資する報告を提供すること
  
 
IV. ジャーナリストが守るべきこと:
 
  • ジャーナリストも自分自身と取材対象者(接触者)の感染を防ぐために公式推奨事項に従うこと。
  • 推奨される物理的な距離を確保すること。
  • 医療従事者の仕事を尊重すること。
  • 患者のプライバシーを尊重すること。同意なしに、患者の身元など詳細な情報を提供しないこと。
  • 疫学の基礎に精通すること。
  • 人々の混乱、不安、恐れを増す誤った情報を広める人々の声を増幅しないこと。
  • 感染者に着せられた汚名を雪ぐメッセージを広めること。
  • 噂や偽のニュースを広めないこと。
  • 患者・有症者、または検疫中の人やその家族との直接の接触を避けながら取材を実施する方法を模索すること。
  • アクセスが制限されたエリアに近づかないこと。
  • 不安や恐怖を生み出すBGMを使用しないこと。
  • フェイスマスクを着用している人だけを見せたり、アフリカのエボラ向けの個人用保護具を持った医療従事者の画像など、恐怖を誘発したりする写真やビデオの使用は避けること。
 
 
V. COVID-19の報道に関して守るべきこと:
 
COVID-19の報道に関して、報道機関とジャーナリストは、次の事項を守るべきである。
  • 個人およびコミュニティの保護対策を奨励すること。
  • 社会的または物理的な距離をとること、およびロックダウン中に実行する行動を提案すること。
  • 病気についての“神話”(都市伝説)を暴くこと。
  • 一般の人々が理解できる方法で、複雑な公衆衛生の概念を説明すること。
  • 一般の人々に、健康についての教育をすること。
  • センセーショナルな言葉は避けること。
  • 症例数と死亡数を伝えるだけでなく、状況の説明とアドバイスを提供すること。
  • 家族を亡くした人々に配慮すること。
  • 受診が必要な状況についての真実の情報を提供すること。
  • 信頼できる情報源に人々を誘導すること。
  • 新しいワクチンと治療に向けた進捗状況を報告すること。
  • SNS情報は、公開する前にファクトチェックすること。
  • 国・州および地方自治体の情報を引用すること。
  
 
VI. COVID-19パンデミックの報道方法
COVID-19の報道方法についての提案
内容:
  • 患者の行動または病気を広める責任に焦点を当てた報告は避けること。
  • 事実情報を広めること。発生時には噂や誤った情報がたくさんあるが、必ず情報を確認し、信頼できる公式情報源を引用すること。
  • 国民の恐れを認めること。人々が心配するのは自然なことである。彼らの懸念を認め、人々が自分自身と彼らの愛する人の精神的健康を気遣いながら自分自身を守るために何ができるかについての情報を提供すること。
  • 不確実性がある場合には既知のものについてのみ報告すること。
  • レポートが与える影響について考えること。
  • 恐れや汚名を煽るのは避けること。人々が病気とその影響について率直に、正直に、そして建設的に話し合うことができる雰囲気を促進すること。
  • 事実に関する背景を説明すること。多くの人々は、ウイルスが体内でどのように機能するか、ワクチンがどのように生成されるか、または免疫システムがどのように機能するかを知らない。
  • パンデミックは永遠に続くわけではないので、可能であれば明るい論調でストーリーを終了すること。
  • 危機を誇張せず、聴衆がそれをどのように扱うことができるかについての実際的なアドバイスを提供すること。事実を歪めないこと。
  • 情報は常に最新の状態を保つこと。パンデミックは時間の経過とともに進化し、それに対処するための方法も変更される可能性がある。
 
報道スタイル:
  • この病気を「致命的」と表現する見出しを使用しないこと。どんな病気も致命的である。新たな緊急事態の文脈では、この用語は一部の人々をパニックに陥らせる可能性がある。
  • 病気(COVID-19)とウイルス(SARS-CoV-2)の正しい名前を使用すること。
  • 技術用語は翻訳すること。公衆衛生の専門家や職員は、一般の人々が理解しにくい言葉を使うことがよくあるが、人々がメッセージを確実に受け取れるようにすること。視覚資料は、複雑な主題の理解を容易にするが、選択する画像には注意すること。人々は必ずしもキャプションを読むとは限らないことに留意すること。
  • 国の保健省やPAHO / WHOなどの信頼できる公式の情報源を使用すること。専門家以外の人が個人的な意見を表明することは避けること。それはリスクを最小限に抑えたり誇張したりするためにはノイズにすぎない可能性がある。
  • 科学によってサポートされていない誤った理論を繰り返すことは控えること。誤った情報が繰り返されると、それは真実であると認識されてしまう可能性があり、それが人口に恐怖と不安を生み出す。
  • 噂や疑わしい情報は精査すること。噂については、彼らを否定したり誤った情報を繰り返したりする前に、出所などを評価すること。
  • 両論併記の趣旨で反対側の主張に触れる際にも、それが科学に基づいていないか、ばかげていて信頼できないものは取り扱わないこと。
  • 治療について報告するときは、神話(迷信)を含めないこと。科学的で証拠に基づいた情報源を使用すること。
  • リスクの高いグループだけに焦点を当てないこと。すべての年齢の人々がCOVID-19の影響を受けているが、一部の年齢層のみに焦点を当てることで、他の人が警戒を緩め、自分自身や他の人を保護するために必要な措置を怠るように促してしまう危険性がある。
 
VII. Protecting the health of journalists
(省略)
VIII. Sources of health information
健康情報のソース
•国、州、または地方の保健省
世界保健機関(WHO)
パンアメリカンヘルスオーガニゼーション(PAHO)
•他の政府部門の国家当局
•健康の卓越性の政府センター
•国立参照研究所
•公衆衛生研究所
•大学
•公衆衛生の学校
•ウイルスと病気を調査する国内および国際機関
•学術報告書と論文
•研究病院
•研究機関
•学術出版物
•学術論文のあるWebサイト:
»サイエンスダイレクト:http://http://www.sciencedirect.com/
 IX. Sources used for this document
このドキュメントに使用されているソース
• Pan American Health Organization (PAHO)https://www.paho.org/coronavirus
• CPJ Safety Advisory: Covering the coronavirus outbreak

https://cpj.org/es/2020/03/aviso-de-seguridad-del-cpj-la-cobertura-del-brote-/

• Tip sheet: Covering the Coronavirus Epidemic Effectively without Spreading Misinformation

https://www.theopennotebook.com/2020/03/02/tipsheet-covering-the-coronavirus-epidemic-effectively-without-spreading-misinformation/?fbclid=IwAR02HHfXN72onicu82cH_vDNTCDuX5Ah4GVawEqQx8LgokK2xQ4j99dTnTw

• Gabriel García Márquez Foundation

https://fundaciongabo.org/es/etica-periodistica/recursos/coronavirus-10-virtudes-del-periodismo-responsable-ante-la-pandemia?fbclid=IwAR0DU82_CiUZfcpYwm0Nsq_BhPjxPdI4KDiZJiZ8pfVb3FpIoishQY_J0JI

• Social stigma associated with COVID-19. A guide to preventing and addressing social stigma

https://www.paho.org/es/documentos/estigmatizacion-social-asociada-covid-19?fbclid=IwAR1hPXlhkPQkYiNdRd_98kHrgUZyDZHHxWS7Uoj9xHCdMXuI4zxYzxQaYnM

PAHO/CMU/PA/COVID-19/20-003
© Pan American Health Organization, 2020. Some rights reserved. This work is available under license
CC BY-NC-SA 3.0 IGO.
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(内容の訳はここまで)
 
 
(おわり)
 

【文責:田村和広】

 


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