情報検証研究所のブログ

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【静かだが画期的な勝訴「篠原孝議員の名誉毀損認定」】      ~事実無根の「報道の暴力」に乗じた国会議員への賠償命令~

かつて毎日新聞は原英史さんに対して事実無根の中傷報道キャンペーンを単独で展開しました。それを真に受けた篠原孝衆議院議員は「報道の暴力」である毎日新聞の記事を根拠に、自身のブログ上で事実無根の論考(原さんへの誹謗中傷)を展開しました。これを受けて、篠原議員に対して原さんが起こした訴訟に、3月29日東京地裁で判決がありました。名誉棄損は認められ、165万円を支払うよう賠償命令が下されました。
 
◆ 4つの点で画期的な判決
判決内容自体は妥当な方向だと感じますが、原さんが失った信用や活動の停滞などの被害と比べると賠償金額は過少だと考えます。事前に想定された通りという点も評価できるのですが、次の4点で画期的な意義を持つ判決でした。
 
1. 「言葉の暴力」に個人でも抗えたこと
今回の判決では、毎日新聞の「報道の暴力」に対して、被害者(原さん)が反論している点に着目しており、そこに注意を向けなかった篠原議員の落ち度を認定しております。これは画期的です。
20年前には「報道の暴力」に対して、企業や個人が全力で反論する有効な手立ては殆どなく、「泣き寝入り」の他ありませんでした。記者会見などそもそも開けず、開いても切り取りが酷いものでした。それが今回の裁判では、SNSや言論サイトなど、一個人であっても報道機関に対して有力な反論が可能な時代になったことが実証されました。もちろん原さんの反論が論理的に妥当で、根拠を持った明瞭なものだったということが前提ではありますが。これからは、反論すべき事柄には、正々堂々と反論することが王道になるでしょう。
 
2. 国会議員に個人でも対抗できたこと
国会内では免責特権に守られて犯罪的な言動さえも許容される国会議員に対して、知的強者とはいえ一般個人(原さん)が訴訟でその非を指摘し、裁判所という「公平」な公的機関で認定されました。
他にも森ゆうこ議員がその特権を行使できる範囲を逸脱し、係争中ですがこちらの判定に対しても、今回の判決は影響を与えると考えても間違いではないでしょう。
 
3.「第三者の発言だから」という逃げ道が狭まったこと
「第三者が報じていることだから」として、内容の吟味なく「フェイク記事」を根拠にすれば、採用した自分の責任となることが明確にされました。たとえそれが新聞のような社会的信用のある報道機関だとしてもです。
これにより「虚偽が疑われる怪しい報道を根拠として自説を展開することには大きなリスクがある」という認識が拡がれば、報道機関の「関係者によれば」的なヘッジ記事にも当然リスクがあることや、情報を採用する場合には検証が大切であることの意識が高まる可能性があるでしょう。
 
 
4.「報道や言葉の暴力」への抑止力
事実無根の中傷記事は「報道の暴力」であり、それを根拠に(二次利用して)個人や企業を誹謗中傷することは「言葉の暴力」です。今回の判決が十分に周知されるならば、これら「報道の暴力」「言葉の暴力」に対して一定程度の抑止力を持つでしょう。
 
◆ 当該判決を伝える報道は静か
判決翌日となる本日(30日)午前9時の段階で、確認できた報道は以下の通りです。(ただし、後日社説等で扱う新聞もあるのでもう少し様子を見ます。)
 
 
朝日新聞毎日新聞はオンラインでは検索できませんでした。後刻購入できれば紙面を確認します。)
 
報道されていても35面など小さく控え目な扱いであり、この判決報道には「静かな」印象があります。しかし、前述した通り深い意義を持つ判決ですので、報道機関内には、何かを感じている人も少なくないでしょう。
 
◆ 訴訟の今後
今回、この判決で確定なのかどうかわかりません。報道によれば
篠原議員は「当方の主張が採用されず、誠に遺憾だ」とのコメントを出した。”(産経新聞より引用)
とのみ報じられ、篠原議員側がこれを受け入れるのかそれとも一層争うのかは不明です。万が一争いが継続されるならば、高裁・最高裁で判決を受けて決定的で画期的な判例となることでしょう。
ただし、他にも毎日新聞森ゆうこ議員との戦いもあり、個人で戦うのは精神的・経済的・時間的な負担が大きいだろうと推測しております。篠原議員との争いは、これで終わりになることを祈ります。
 
まずは原さんの訴えの妥当性が認定されましたことを、心からお祝い申し上げます。
 
(おわり)
 
【文責:田村和広】
 
 

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