情報検証研究所のブログ

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【日本は「誤訳」を放置しない方が良い】 ~紛らわしい発言が「女性蔑視」に濃縮される仕組み~

森前会長の発言が、朝日新聞に報道され、それを一部「誤訳」した記事がニューヨークタイムズ(NYT)他に掲載されました。
これが“お墨付き”となり、「女性蔑視的と受け止めら(誤解さ)れてもおかしくない発言」は「女性蔑視発言」にまで「濃縮」・確定されて行きました。
今回、その過程(仕組み)を図にまとめました(図1)。(図1において情報は、①から順番に流れて行きます。)

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◆ 誤訳は実は”made in Japan”か?
森前会長の記事を書いたのは、NYTでは主にMotoko Rich氏ですが、NYTの記事によれば
”Motoko Rich is the Tokyo bureau chief.”

https://www.nytimes.com/2021/02/03/sports/olympics/tokyo-olympics-yoshiro-mori.html?searchResultPosition=5&fbclid=IwAR3URs_mS7VBj7bGcOrG4ltbReHjbDMaNZa5I2mzVyp7KtF5uWhWYX0eoME

 

とのことです。
「東京ビューロー チーフ」がNYT東京支局にいると仮定すると、「他者が話した内容」が「森前会長の発言」へと不正確に翻訳されたのは、実は日本国内だった可能性があります。
ちなみにMotoko Rich氏は、慰安婦の記事も頑なに”sexual slavery”と言う呼称で配信しており、東京支局長の役割を良く継承している方です。(非難の意図はありません。)
 
ところで、朝日新聞東京本社とNYT東京支局は同一住所(中央区築地5-3-2)にあります。
要するに築地のあるビル内(朝日)で素材は生まれ、同じビル内(NYT)で誤訳に”加工”され、米国に”輸出”され、米国から”逆輸入”されていたのです。
しかも、発言したとされる内容は事実から離れてより激烈化し、海外という権威から”お墨付き”を得て、国内の騒動に輪をかけていったことも伺われます。
 
これは本当によく見る典型的な「ハウリング回路」です。
 
原さんが動画でも指摘するように、本来、謝罪・撤回会見では、「女性蔑視」の意図はなかったこと、不本意な伝わり方をしたことを重ねて強調すべきでした。しかし、「不適切な発言だった」として一般化した(曖昧な)指し示し方で当該発言を撤回するに留めてしまったために、「謝罪・発言撤回会見」は、逆に「女性蔑視発言追認会見」となってしまいました。全く残念な「二重事故」でした。
 
 将来のために、今回の誤訳は訂正を
この回路は、過去に何度も使われた伝統芸です。例えば、「慰安婦」⇒「Comfort Women」⇒「sexual slavery」⇒「性奴隷」などで、この仕組みが発動しておりました。このままでは、将来もまた何度も繰り返されることでしょう。
将来この事態が起きてしまうことを抑止するためにも、今回の「誤訳」には、訂正を強く継続的に申し入れることが大切です。組織委員会か日本政府がするのがベストですが、利害関係からできないのかも知れません。
しかし、事実と乖離した今回の状況は、日本国民のみならずスポンサー企業にとっても不本意であり、「女性蔑視」の意図はなかったという事実が回復されるまで、忍耐強く申し入れることは理に適う行動でしょう。
悲観的な見方をすれば、今回は回復不能かもしれません。それでも今回を曖昧にしないことで、「日本は変わった。誤報や事実無根の侮辱をすると大変厄介な相手になった。」と国際的に周知させる効果はあると考えます。これにより、将来軽々に日本を貶めにくくなる抑止効果が(少しは)期待できるのではないでしょうか。
 
(おわり)
 

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