情報検証研究所のブログ

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【検証:イギリスとドイツの流行状況】 ~欧州の流行の沈静化を祈ります~

イギリスでは11月に一旦収束に向かっていたCOVID-19の流行が、12月に入り再度拡大方向にトレンド転換し、その要因として「ウイルスの変異種」の影響も指摘されております(グラフ1参照)。

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ドイツもまた11月は横這い傾向でしたが12月に入り傾向が変化し再び流行拡大ステージに入っております(グラフ2参照)。

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その結果、現在両国とも一層強力な対策を継続しており、その影響は来年にも続きます。
 
◆ 流行拡大要因は即断できない
欧州諸国でも「変異種」は確認されている中、ドイツの状況はまだ確認できません。しかし、時系列での相関性を確認すると、現時点で「その影響がない」と断定することもできません。流行状況の傾向はやや異なりますが、そのトレンド転換の時期には相関関係がありそうに感じます(グラフ3参照)。(因果関係ではありません。)ただし、イメージ先行の「1.7倍」などの数字はどうもよく分かりません。テレビの情報エンタメ番組では恐怖を煽る扱いをしていますが、冷静に追加的検証報告を待つべきでしょう。
 

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このところの欧州諸国における流行拡大への傾向変化に対して、すぐに思い浮かぶものだけでも次の要因が考えられます。
  1. 「冬に向かう」という季節要因
  2. 「変異種」による感染しやすさの変化
  3. 年末に向けての社会慣習的要因
その他も含め、どの要因が主導的に影響したのかは断定できません。
 
◆ 主要因は断定できないか、欧州諸国の対応は合理的
しかし「エビデンスがないから」ということで何ら追加的対策を講じなかった場合には、感染状況が想定を超えたレベルまで進行する可能性はあります。そのため、仮に「空振り」だったとしても強固な移動制限をかけることは合理的判断だと考えます。
特に、春の第1波の際、ロックダウンに移行するのを逡巡したイギリスでは、他国に比べ2週間程度対応が遅れ(そのためかどうか断定はできませんが)、感染の収束が長引くという手痛い経験をしております。その失敗から学んで、イギリスが安全寄りのスタンスをとることは理解可能です。
 
◆ 日本の入国制限
「日本の入国管理をより厳格にせよ」と指摘する人もおりますが、私には知識不足でよくわかりません。ただし、第1波の際には欧州由来の流行拡大を招いたと分析されているので、改めて対策強度の妥当性を検証することには意義があると考えます。
NHKによれば、日本も
”24日以降、当分の間、イギリスからの新規の入国を拒否するなど、入国制限を強化する新たな措置を実施する(NHK23日報道より引用)”
とのことですが、英国のみでいいのかどうか、再度検討することも必要でしょう。
暫定対応として状況を確認する間入国制限を強化したとしても、エビデンス不足の状況と雖も決して「拙速」とは言えないでしょう。
 
(おわり)
 
(参照サイト)
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報道発表資料 2020年12月 |厚生労働省

英政府、ロンドンなどでクリスマス時期の規制緩和を中止 感染拡大 - BBCニュース

欧州で新型ウイルス対策強化 ドイツはロックダウン強化、フランスは夜間外出禁止 - BBCニュース

 

【文責:田村和広】

 


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