情報検証研究所のブログ

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【検証:検査数で補正した陽性者数のフェーズ間比較】 ~検査数で割り戻すと全く違う風景が出現~

オンラインセミナー「デジタル庁の本当の課題」のご案内】
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テーマ: 「デジタル庁の本当の課題」
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ホスト: 岸博幸慶應義塾大学 教授、加藤康之・株式会社TIE代表取締役、原英史・株式会社政策工房 代表取締役 ほか
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johokensho.hatenablog.com

 

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『新型コロナ「第3波」は来たのか』という表題で、池田 信夫氏(アゴラ研究所所長(学術博士))がマスコミの報道ぶり(とそれに呼応する世論)に対する論考を公開しています。
私も「感染者」に関する現状認識とメディアの報道姿勢には問題を感じているので、池田氏の論考には同感です。
(なお、「死亡者が増加する潜在リスクに対する評価」には私独自の見解があります。)
 
そこで、同論考上で指摘されている論点の一つ、
 
「新規感染者数が初めて2000人を超えて第3波が来た」とか「東京都で初めて500人を超えた」と騒いでいるが、これは正確にいうとPCR検査の新規陽性者数で、サンプルが一定でないと統計的な意味がない。アゴラ11月19日「新型コロナ「第3波」は来たのか」より引用)”
 
について、私なりの分析を行い、追加検証します。
(引用数値は全て厚生労働省の報道発表資料より引用し、筆者が計算しました。)
  
◆ 第1、第2、“第3”波各期間の検査数比較
  
表1の通り、検査数には期間ごとに大きな差がありました。

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結論からいうと、
第1波  :321,058件
第2波  :1,538,640件
“第3波”:1,365,974件
 
となり、第1波を1(基準)とし、1日あたりに換算すると、
 
第1波  : 1
第2波  : 4.49倍
“第3波”:10.53倍
 
となります。
つまり1日あたりで比較するならば、
現在は、第1波の約10倍の規模で検査が行われております。
   
 
◆ 新規陽性者数移動平均推移の比較
  
新規陽性者数の推移について7日移動平均で比較すると、グラフ1の通り、既に現状の水準は1日当たり1,800人(:赤折線)を超えており、第1波の549人(灰色)、第2波の1,442人(青色)を超えて未だ騰勢が強い状況です。従来よりも遥かに大規模な流行を予感させる動きです。

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しかし、これを先の検査数倍率で割り戻して補正すると、グラフ2の通り、相対関係が全く逆転します。(期間の設定など補正諸元は表1をご参照ください。)

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つまり、現状(“第3波”)は、11月18日現在で172人となり、これは第2波322人の約5割、第1波549人の約3割の水準に過ぎません。
つまり、仮に現状を“第3波”と呼称するならば、第2波さえ越えてはおらず、第1波に比べればまだ“小波”です。
ただし、これはあくまで現状の水準の話であり、今後どこまで高い“大波”になるかはここからは何も言えません。
  
 
◆ 結論
  
  1. 現在マスコミが伝えている“第3波”の数値について、「サンプルが一定でないと統計的な意味がない。」という主張は妥当である
  2. 検査数の規模に基づき補正して比較するならば、現在の陽性者数の増加傾向は、“第3波”として捉えるとしても、まだ相対比較では“小波”と表現すべきであり、入り口とするならば、本格的な波は今後の動向次第である
  3. ただし、「真の感染者数が増加しているから検査が増えた」可能性は排除できないことには留意すべきである
 
(おわり)
 

【文責:田村和広】

 


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