情報検証研究所のブログ

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【検証:新型コロナウィルスに何が奏功したのか】 ~利害関係のない科学者による検証が必要だ~

 日本における新型コロナウィルス感染症の緊急事態は一旦去りましたが、次の波に対する警戒は必要です。日本の手法に対する評価はめまぐるしく変化しており最終的な評価がどうなるのか予想もできません。
 しかし「一体何が功を奏して感染爆発を防ぐことができたのか」については、次の波への効果的な対策を立案準備するためにも検証が必要です。

 現在、「日本の対策とその効果」については色々な仮説が提唱されていますが確定するとしてもやや時間がかかりそうな気配です。医療業界や政治経済の世界には大きな利害関係が存在しますがそこからの独立性が保てない人物の論評には、信をおいていいのかどうか本当に悩みます。出来る事ならば、業界の利害関係が薄い科学者(社会科学および自然科学)を中心とした評価分析をして頂きたいと思います。今回は諸国のロックダウンについてと日本の対策を少し比較しました。

 

◆ 時系列でみた各国の対策


 表1は、主な感染拡大国(米国はニューヨーク州)の、感染拡大防止策の概要を一覧にしたもので、週ごとの時系列で表してある。ここで、日本の注目すべき特徴は2点ある。
※ご注意 表1の「推定感染拡大期」は各国の公式見解ではなく筆者の個人的見解に過ぎません。また、簡易な表に収めるために要約しているので内容は精密ではありません。詳細は各国が公表する正式な情報でもご確認ください。)

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◆ 日本の特徴1:ダイヤモンドプリンセス号入港で緊張

 2月3日ダイヤモンドプリンセス号が横浜に入港し、マスメディアの格好の取材対象になった。これにより、いよいよ中国発の感染症が身近な問題となり、日本人の感染症対策への関心が高まった。手洗い・マスクなどの具体策が一層徹底された。

 

◆ 日本の特徴2:中国型と欧州型の小さなツインピーク


 日本では、2月24日にはいち早く「ここから1,2週間が(感染が拡大するか収束できるかの)瀬戸際」という発表があり、その後中国からと推測されるウィルスの感染拡大が北海道で起きた。これは札幌雪祭りで拡大したと推測され、イベントへの警戒心が高まった。その結果、2月28日には北海道で他県・他国に先駆けて「緊急事態宣言」が発出された。また、北海道での小学生兄弟の感染事例発生から、3月2日より日本で休校措置が取られた。これらの結果日本においては感染への恐れと緊張感が高まり、自粛要請に従って中国由来の感染爆発を未然に防止した。
 その後、世界的には欧州型の感染爆発期を迎えたが、日本では緊張感が継続し、欧州型の感染が拡大するのを遅らせていた。そのうちに欧州各国、次いで米国などからの入国が厳しく制限された結果、欧州型の感染も小さな段階で収束を迎えた。

 

◆ 日本は島国なので入国制限≒ロックダウンだったのでは?

 「ロックダウン」と一括りに表現するが、各国の状況は様々である。日本の自粛要請による営業制限や移動制限と同様の水準の国もあり、大きな違いは法的罰則があるかどうかだけだったりする。EU等の欧州諸国は大陸国であり、特にEUは人の移動に対する国境の障壁を低くしていたエリアである。そのような地域の「ロックダウン」と島国のために海空の港で人の移動をコントロールできる日本の「入国制限(禁止)」は同等の効果があった可能性もあるだろう。この辺りの解析は可能なはずなので今後の正式な分析を待ちたい。

 

◆ 日本はタイムラグを生かしたのでは?

 日本は、「中国を見て気を引き締めた直後に欧州を見て入国を制限した」ことで、日本独特の「クラスターの把握と根絶」という手法が有効に機能したのではないか。

 中国由来の感染ピークによる緊張感の醸成、タイムリーな欧州からの流入制限、国民の予防意識と行動、保健所の探知能力など、いくつかの社会的要因が重なり、(人口当たり)感染率を低く抑えられたのではないか。

(なお、上記の特徴1・2及びそれに続く論評は筆者の私的見解に過ぎない。)

 

◆ その他の諸説について

 現在、日本の感染率や死亡率が低いことについて「BCG効果説」や「類似コロナウィルス説」など諸仮説が提唱されている。筆者もその可能性には期待しているが現段階では科学的に確定した説ではないのでこれも今後の研究成果を待ちたい。

 

◆ まとめ

 「言葉の黒魔術」には本当に気を付けたいが、今回も言葉に惑わされている可能性がある。諸国の「ロックダウン」も日本の「入国及び移動制限」も「営業自粛」も、国民の社会性まで含めると同じような効果があるのではないかと考える。「ロックダウンは効果がある/ない」、「緊急事態宣言や自粛要請には効果がある/ない」など、イメージや立場で様々な主張がなされているが、なかなか怪しい言説も多い。疑似科学に囚われず、確かな事実に基づいて吟味して行きたい。

 石塁は蒙古軍の上陸を能く防いだという(弘安四年)。利害関係のない科学者による検証でコロナウィルスの上陸を阻む強固な“石塁”を築いて頂きたい。

 

 

【文責:田村和広】

 

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