情報検証研究所のブログ

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世界各国で「感染者の全数把握」などなされていません

5月11日参議院予算委員会福山哲郎議員(立憲民主党)は、感染者は実際にはどの程度いるのかを政府側に質問。明確な答えをしない安倍首相らを厳しく追及し、以下の発言がありました。

・「世界中は無症状・軽症の方まで含めて検査を入れて、感染者を出している。それで実態を把握する中で、解除の要件などを議論している」、

・「日本の場合、(検査で判明している人の10倍いるなら)十万人、日本中にいて、その人たちが感染を広げているんじゃないんですか

 

<検証>

世界中は無症状・軽症の方まで含めて検査(して)実態を把握」は、事実ではありません。

どこの国でも、感染者の全数把握などしていません(例外的に、感染者がほぼ皆無の国ならあり得るかもしれませんが)。

例えば、欧米主要国(スペイン、ドイツ、イタリア、アメリカ、イギリス、フランス)の検査数をみると千人に10~35人、これに対し日本の検査数は千人に1.5人。日本が少ないとみえるかもしれません。しかし、これは、欧米諸国で感染者を全数把握しているわけでなく、感染が広がっているからです。人口あたりの感染者数で桁1つ、人口あたりの死亡者数では桁2つ異なります。検査数が多くなるのは当然です。

また、もしこれらの国で、無症状の感染者まですべて探し出すため片っ端から検査しているとしたら、陽性率は極く低くなるはずです。しかし、多くの国では日本よりも高い。つまり、検査が多いどころか、逆に日本と比べ、感染の疑いの強い人に絞り込んでいる状態です。

一方、オーストラリア、韓国、台湾をみると、陽性率が極く低い。つまり、日本と比べ、感染者をより多く探し出していると考えられます。しかし、そうはいっても、検査しているのはせいぜい千人に3~30人程度。疑わしい人に絞って検査していることに変わりはなく、全数の把握を行っているわけではありません。

国会でこうしたデマを流し、これをマスコミでわざわざ取り上げるのは、いい加減やめてほしいものです。また、政府には、より明確に否定してほしいと思います。こうしたデマの拡散は、保健所や医療機関への検査要求の増大につながり、ただでさえギリギリの現場に無用な負担をもたらすだけです。

 

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【文責:原英史】

 

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