情報検証研究所のブログ

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【意義深い閣議決定:「慰安婦」の適正表示】 ~山川教科書は将来「従軍」を削除するか~

報道によれば本日(4月27日)、政府は「従軍慰安婦」や「いわゆる従軍慰安婦」という用語を使うことを不適切であると、閣議決定しました。
 
”政府は27日の閣議で、政府としては「従軍慰安婦」という用語を用いることは誤解を招くおそれがあることから「従軍慰安婦」または「いわゆる従軍慰安婦」ではなく単に「慰安婦」という用語を用いることが適切であると考えているとする答弁書を決定しました。”(NHK NEWS WEBより引用)

教科書では、山川出版社が新たに参入した中学生用の教科書に「いわゆる…」を記載して話題になりましたが、実は従来から高校向けでは同様の記述を山川は続けておりました。
  
 
◆ 保護者の関心は不明
先週、新宿区大久保の「第一教科書」(http://daiichikyokasho.co.jp/
に行き、教科書やリニューアルされた傍用問題集を仕入れる際に山川の中学歴史教科書も購入しました。その時のことです。
 
中学生の親御さんと思しき二人の女性と書店員が次のような会話をしておりました。
女性:「山川の中学歴史教科書はどこですか?」
店員:「山川は中学用の歴史教科書は出していませんよ」
女性:「え!そうなんですか?」
 
(私、目の前に教科書があるのでお節介にも割り込んで)
私:「あのー、おさがしの教科書はこれではないですか?」
女性:「あーこれですね!」
店員:「ああ、そうでした。今年から出していましたね。」
女性:「店員さん、山川教科書専用の問題集はありませんか?」
店員:「それは本当にまだありません。」
女性:「教科書自体には用がないので買いません。問題集を買うつもりできたのです。」
私(内心):(えっ?)
 
ということで、店員さんもあまり気にしておらず、親御さんもあくまでも進級・進学の成績のことしか頭にない様子でした。
  
 
◆ 結局、指導教員次第ではないか
根拠のない想像に過ぎないのですが、「いわゆる従軍慰安婦」というキーワードからどう説明するかは歴史の先生次第ではないかと考えております。
つまり、
「『従軍』記述は、朝日新聞の誤用から始まり国際世論戦で問題となったが実態とは著しく違うので『いわゆる』という扱いであること」と説明するか、
「日本軍の蛮行があって…」と説明するかは、
指導教員の信念・所属する組合・地域の教育委員会次第ではないでしょうか。
  
 
◆ 「満洲」と「満州」の表記処理
満洲」という旧字体表記の扱いが、他教科書の検定不合格で論点の一つとされていました。本件山川は、本文中では「満州」と記述し、ポスター写真中の文言で「満洲」との表示をのせる手法で無難に処理しておりました。これは他の合格教科書でも使っていたテクニックでした。
本件は、歴史上もそうですが、それよりむしろ戦後直後の文部省の問題ではないかと考えます。
 
なお、「いわゆる従軍慰安婦」の部分と亀甲船を除けば、山川の中学用歴史教科書は「さすがの仕上がり」でした。写真資料が豊富(≒製作費も豊富?)で、内容も高校過程への接続がいい感じでした。
今回の閣議決定によって山川出版社でも、1日も早く当該部分の記述が適切になることを祈ります。
   
(おわり)
 
 (添付の写真は山川出版社「中学歴史 日本と世界」より引用)
写真の説明はありません。
1人の画像のようです

 

【文責:田村和広】

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